継承語に関する研究について紹介しています。日本語に特化した研究以外にも、他の言語の研究なども紹介し、総合的に継承語の維持について考えています。他にも、継承語の研究に関する入門書なども紹介しています。
在外日系子女に関するレポートと新聞記事
所用で、海外で長期間滞在する日系人子女について調べる必要があったので、そのまとめです。 まずは、2000年からの海外の日系人子女の動向について書いてある新聞記事が何点かありました。 日本人学校などで学ぶ児童・生徒は7万人以上 (December 3, 2014) https://www.nippon.com/ja/features/h00088/ 2000年から2013年くらいまでの全世界の海外での日系子女の統計や、日本人学校、継承語学校などへの通学状況、帰国時の言語能力についてまとめたもの。中国や他のアジア諸国にいる日系子女の多くは日本人学校に通うのに対して、英語圏(特に北米)の日系子女は現地校やインターナショナルスクールを選択することが多く、日本人学校に通う率が非常に少ないというのが印象深かった。 海外邦人131万人の子供は現地校?日本人学校? (June 18, 2016) https://mainichi.jp/premier/business/articles/20160617/biz/00m/010/004000c 上記と同様に、2000年から2015年くらいまでの海外の日系子女の教育動向をまとめたもの。まとめた人が、中国在住の小学生の子供がいる毎日新聞の特派員で、自分の経験にも基づいた記事になっている。上記の記事と同様に、アジア圏での日系子女の教育事情(ほとんどが日本人学校を希望)と、英語圏での日系子女の教育事情についてまとめられている。2014年時点では、北米地域(アメリカとカナダ)に在住する24,126人の子女のうち、日本人学校に通っているのはわずか435人(1.8%)とのことで、12,890人は、現地校と補習校、 10,801人 (45%)は、現地国のみに通学している。 在外の日系人子女の数として一般的に使用されているのは、外務省の「海外在留邦人数調査統計 (Annual Report of Statistics on Japanese ...複数言語を話す家庭での家庭言語政策について (OPOL: One-parent-one-language policy)
Danjo, C. (2018). Making sense of family language policy: Japanese-English bilingual children’s creative and strategic ...プリンストン日本語学校の継承語(永住組)コースの実践報告
Calder, T. M. (2008). 補習校における母語支援: プリンストン日本語学校の実践から. In MHB研究会夏期研究大会 バイリテラル・バイカルチュラルの育成を目指して 実践と課題, xxx, xxx, 2008 (pp. 28-37). ニューヨークにある補習校(日本の文部科学省から支援を受けている土曜日日本語学校)で、帰国を前提とした日本のカリキュラム以外に、継承語(永住組)コースが2007年から開始されたそうで、その取り組みや、課題などに関する論文です。継承語コースは素晴らしいというような論文ではなく、現場で直面する課題や、理想と現実の違いなどが書かれているとても良い報告だと感じました。 ただ単純に補習校の日本語の目標値を下げるのではなく、継承語としての日本語を独自の言語集団として認めようという試みであるのが読み取れます。日本語コミュニティーでは、よく母語話者と非母語話者がはっきりと分別されている文化がありますが(「日本人」は日本で生まれた日本語を話せる集団で、それ以外は完全な「日本人」じゃないというような感じ)、他の言語コミュニティー(特にスペイン語コミュニティー)では、「母語話者」というのは一体何かという問いが非常に頻繁にされていると感じます。 子供が継承語話者であったり、継承日本語の学校やクラス運営する上で、いろいろ参考になる文献だと感じました。継承語話者向けの教科書「おひさま」
継承語を学ぶ4歳から小学校低学年向けの教科書「おひさま」がくろしお出版から発行されました。内容はとても重質しているようなので、一冊買ってみようかと思っています。 ———————————- おひさま[はじめのいっぽ] 子どものための日本語 山本絵美/上野淳子/米良好恵[著] くろしお出版[編] 価格2,000円+税 ISBN978-4-87424-757-0 C0081 発売日2018/4/2 ページ数200頁 複数の言語や文化に囲まれて成長するマルチリンガル(複数の言語を使用する人)の子どものための日本語学習教材。3・4歳〜小学校低学年対象。子どもの心を捉えるイラストや写真、多彩なトピックや楽しい活動を通して言語の体験・知識を豊かにすると共に、感受性や知的好奇心を育む。さらに、日本や世界へと視野を広げ、異文化理解を促進し、自己表現と相互理解を目指す。補習授業校、日本人幼稚園、日本人学校などの教育機関だけでなく、ご家庭(国際結婚の家庭の子ども・海外在住の子ども・日本在住の外国人の子ども、帰国子女など)でもおうちの方と一緒に楽しく学べる。多様な言語環境にいる子どもたちが日本語に触れ、学びを始める「はじめのいっぽ」に。 ニューヨークの皆様、こんにちは。日本語教科書「おひさま」、ついに4月2日に刊行が決定しました。特に海外在住の日本人のお子さん(幼稚園から小学校低学年)を対象にした、「世界のことを学びながら日本語を楽しく学ぶ」、新しい教科書です。2014年より試用版を、世界中の皆様に実際に使っていただき、そして得た貴重なご意見をもとに改良を重ね、ようやく完成いたしました。 この1冊さえあれば、ご家庭、日本語学校、日本語教室、インターナショナルスクール、補習授業校のプリクラスで楽しい日本語学習が可能です。「世界の国々」「野菜・果物」「昔話」など全10章(26課、200頁オールフルカラーです。)で構成され、「生き物」「宇宙」「環境」に関しましては、東京大学と神戸大学の専門家の先生方に監修していただきました。現役の着物デザイナー、豆千代さん監修の着物に関するページもございます。 そして、各ページには親御さんや新米の先生にも使いやすいよう、「教え方のアドバイス」も丁寧に記してあります。また、様々な日本語力や年齢のお子さんにご利用いただけるように、難易度別に星マークで印もつけました。さらに、社会の多様性を意識して様々な国籍の人々を登場させ、職業のジェンダー、ステレオタイプや家族などにも配慮してあります。世界の名画やクラシック音楽などを盛り込み、芸術的な感性を育み、文化資本を豊かにする工夫も満載です。 まさに「おひさま」は、海外で子育てをされている親御さんの「こんな日本語教科書が欲しい!」という願いと、海外で子どもたちに日本語を教えている日本語教師たちの要望、そしてその分野を研究している研究者の学術的知識がギュッと詰まった一冊なのです。日本国内外の紀伊国屋やジュンク堂等の書店や日本のAmazonではもちろん、ご予約・ご注文いただければ他の(日系)書店でもご購入可能です。 最新情報は、随時、「おひさま」公式ページでご紹介します。「おひさま」をどうぞお楽しみに。 https://www.9640.jp/ohisama/ ———————————-永住組子女が週末学校で獲得できる継承語日本語能力
Nakajima, K. (2016). 海外日系児童生徒とバイリンガル教育. (Ch. 9). In バイリンガル教育の方法: 12歳までに親と教師ができること. (pp. 181-200). Tokyo, Japan: ...Mixed Heritage Speakersの言語とアイデンティティー
Shin, S. J. (2010). “What About Me? I’m Not Like Chinese But I’m Not Like ...継承日本語話者の「は」(topic marker)と「が」 (subject marker)を使った研究
Laleko, O. & Maria, P. (2016). Between syntax and discourse. Linguistic Approaches to Bilingualism, 6(4), ...継承日本語話者の日本語と英語能力と家庭でのサポートの関係
Mori, Y. & Calder, T. M. (2017). The Role of Parental Support and Family Variables ...日本語補習校(週末学校)と日系人アイデンティティーの形成
Chinen, K. & Tucker, G. R. (2005). Heritage Language Development: Understanding the Roles of Ethnic ...日本語で書かれたアメリカにおける継承日本語教育の歴史と展望
Douglas, M. O. & Chinen, K. (2015). アメリカの継承日本語教育. In アメリカにおける日本語教育の過去・現在・未来(Japanese Language Education in ...