前回のトピックに引き続き、今日は継承日本語話者への戦争教育について書いてみようと思います。前回は、日本語補習校で使われている教科書で戦争がどのように導入されているかを書いたので、今回は、アメリカの学校(ニューヨーク市の公立学校)で戦争がどのように扱われているかをまとめてみようと思います。 まず、最初に、アメリカの公立初等教育のシステムについてですが、 日本の公立初等教育が「教育指導要領」に沿って作られた教科書を使用して指導要領に沿って、日本のどこでも同じカリキュラム使って教えるという中央集中性なカリキュラムなのに対し、アメリカは学校教育における中央の連邦政府の役割と、地方の政府や教育機関の役割が別れており、日本と比べると、地方の政府や教育機関の役割が高いと感じます。これはアメリカは連邦政府制なので、教育だけではなく、司法や行政などにおいても中央政府と地方の政府のそれぞれに役割が分担されているので、特にアメリカの教育システムが前衛的であるというわけでは無いのですが、地域の特色や教育を受けている人たちのバックグラウンドなどを考慮してカリキュラムが作成できるようになっています(他方で、教育を受ける場所によって違った教育カリキュラムを使うのは平等性に欠けるという欠点もあります)。今回は、ニューヨーク市の公立学校のカリキュラムで、戦争がどのように扱われているかを調べたのですが、ニューヨーク市はアメリカでも非常に前衛的な場所であり、またニューヨークを含む東海岸には、イタリア系、ドイツ系アメリカ人のいわゆる第二次大戦中のthe Axis (枢軸国)にルーツを持つアメリカ人も多くいるので、そう言った人口統計的な要素もカリキュラムに反映されているかもしれません。 ニューヨーク州のSocial Studiesのカリキュラムで、第二次世界大戦が扱われるのはGrade 8 (中学三年)の最後のユニットの Grade 8 Unit 6 “America After World War II: The Changing … More
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日本語補習校での戦争教育について その1
これまでは日本語能力だけを目標に継承日本語教育を行ってきたのですが、子供が十代になると、世界の歴史に関する情報なども少しづつ学校やメディアなどで学習してくるようになりました。今回は、特に気になった日本語補習校での戦争教育について書いてみようと思います。 継承日本語教育を行っている (特に補習校として、日本の学習指導要領に沿って日本語の教科書を使って指導している)学校に行っている場合は、アメリカの学校で教えられる世界の歴史と、日本の学習指導要領による世界の歴史の間に違いが出てきます。アメリカではヨーロッパ史に重きが置かれて、日本ではアジア中心の世界史に注目するという地理的な理由による違いは良いのですが、歴史の解釈や視点が異なる場合は、継承日本語を学んでいる子女は、一つの歴史的事実に対して、二つの異なった視点を学校で教えられることになります。また、十代はアイデンティティーを形成する上で重要な時期なので、その異なる視点や意見を子供たちがどのように理解するのかは、子供の将来のアイデンティティ形成には非常に大事だと思います。