文部科学省の「在外教育施設の今後の在り方に関する検討会」報告書

2021年の2月から、文部科学省と外務省が「在外教育施設の今後の在り方に関する検討会」というものを設置し、2030年までの在外(海外)での日系子女の教育の方策を取りまとめしました。 この検討会の目標は、以下の三つとのことです。 「在外教育施設未来戦略2030~海外の子供の教育のあるべき姿に向けて~」 本戦略策定の目的: 2030年の海外の子供の教育のあるべき姿を実現するため、 「在外教育施設グローバル人材育成強化戦略」 (平成28年策定)に基づく取組を発展させる ポスト・コロナ時代の在外教育施設の果たすべき役割や施策の方向性を明確化する 海外の子供の教育について国家戦略としての支援方策を具体化する 日本語を継承語話者として話す子女が通うことの多い、週末の補習校などについても、支援の方法などが記載されています。検討会のレポートや参考資料は、文部科学省のウェブサイトで見られるようになっています。

「日本語教育の推進に関する施策を総合的かつ効果的に推進するための基本的な方針」の閣議決定

ここや、ここでも紹介しましたが、日本での(非日本語母語話者に対する)日本語教育の制度化が進んでいます。 2019年6月には、「日本語教育の推進に関する法律」が公布、施行されましたが、それに続き、向こう5年間の取り組みを決めた「日本語教育の推進に関する施策を総合的かつ効果的に推進するための基本的な方針」が2020年6月23日に閣議決定されたそうです。方針のコピーはhttps://www.bunka.go.jp/seisaku/bunka_gyosei/shokan_horei/other/suishin_houritsu/pdf/92327601_02.pdfで見られます。 これらの法律の成立過程については、「にほんごぷらっと」の以下の記事が詳しいです。 あと、「日本語教育の推進に関する法律」、「日本語教育の推進に関する施策を総合的かつ効果的に推進するための基本的な方針」は、文化庁のこのページに掲載されています。 これらの法案は、主に日本国内で日本語を母語としない人たちへの日本語教育に関する施策なのですが、海外での日本語継承語話者に関する項目も含まれています。これらの法律、方策では、「日本語継承語」という言葉は使われず、「海外に在留する邦人の子等」への日本語教育という表記になっており、「日本語教育の推進に関する施策を総合的かつ効果的に推進するための基本的な方針」では、pp.12-13に記載があります。向こう5年間でどういう施策を行うのかという具体例がいくつか書かれているのですが、まとめると以下のような感じです。 国際交流基金を通じて、日本語継承語の教育形態や課題などについての実態把握を行う。また、「現地の日本語教育を行う機関」等と連携しつつ必要な支援を実施する。 教科書の無償給与、教師の派遣、校舎借料などを「在外教育施設」に行う。 中南米地域などには、JICAを通じた支援を行う。 上記の2点目や3点目に関しては、これまでも行われてきたことが書かれているように感じるのですが、国際交流基金の記述に関しては、国際交流基金は、日本語を外国語と学ぶ人への支援をするとということが多かったのですが、「現地の日本語教育を行う機関」で日本語を外国語として学習する学生だけでなく、日本語を継承語として学習する人たちへの支援も行うということで、日本語継承語教育に関して少し進展があったように感じます。

「日本語教育の推進に関する法律」関するフォーラム @ Boston

先日、日本で制定された「日本語教育の推進に関する法律」がどのように海外での日本語継承語話者の教育に影響があるのかを議論するフォーラムが、AATJ (全米日本語教育学会)のJapanese as a Heritage Languageの部会主宰で2020年3月18日(水)にボストンで開催されるそうです。詳細は、以下の通りです。参加無料ですが登録が必要で、定員が45名となっていますので、早めに登録ください。 ———————————- 海外における継承日本語教育の充実に向けて ———————————- 日程: 2020年 3月18日(水) 時間: 7:30pm-9:30pm 場所: Public Garden room (5th floor) … More

新時代海外移住者の日本語継承

カルダー, 淑子. (2019). 新時代海外移住者の日本語継承: 日本語教育推進法案に対する署名運動から. In 喬. 宮島 et al. (Eds.), 開かれた移民社会へ. (pp. 234-241). Tokyo, Japan: 藤原書店. 「日本語教育推進法案」が2019年の国会で通過しましたが、その原案が公開された2018年から、日本語教育の推進の対象に、国内の移民者および在外(海外)の一時滞在者に限らず、海外での「日本にルーツを持って海外に永住する人」にも対象を広げようと活動を続けられているカルダー淑子先生の論文です。 「日本語教育推進法案」に関する運動に関しては、この論文が書かれてから国会通過まで紆余曲折があったのですが、この論文では深く触れられていません。主な内容は、「日本にルーツを持って海外に永住する人」に対する日本語教育の必要性について、北米だけでなく他の地域の特色なども考察して書かれています。また、海外で日本語教育を受けて日本語と現地語のバイリンガルとして活躍できる人材が、現在の日本社会や企業では良い意味でも悪い意味でも特別視されており、日本社会、企業がバイリンガル人材を活用できる場所を提供できているのかという疑問も投げかけらています。

「日本語教育の推進に関する法律案」(日本語教育推進法案)

日本の超党派で作られた日本語教育推進議員連盟が、「日本語教育の推進に関する法律案」(日本語教育推進法案)という法案の作成を目標にしているということで、海外に住む日本語継承語話者にどのような関係があるのかをまとめてみました。 2018年の5月で発表された案では、国内の外国人居住者への日本語教育という面が重要視されていて、海外で日本語を保持していく継承語話者への対応が記載されていなかったのですが、プリンストン日本人学校のカルダー淑子先生などが中心となって、この法案の対象に海外継承日本語教育を盛り込んでほしい旨の要請文が2018年7月に日本語教育推進議員連盟に送付されました。 http://www.nihongoplat.org/2018/07/19/特集・日本語議連-日本語教育推進基本法の原案へ/ また、「日本語教育推進基本法案への要請文」への賛同署名活動も始まりました(以下の通り、すでに「日本語教育の推進に関する法律案」では継承語話者に対しても、かなりの記述が含まれるようになったのですが、今も署名活動は続いているそうです。)。 https://sites.google.com/site/keishougo/kihonhoan?fbclid=IwAR1QfBg_vMzgqIZAoY9L4tBoLVtQxXYzW74tebFMzFUhKIOLICtKgtrvyo0 カルダー先生を含め、海外で継承語教育に従事している人たちの複数の方が、署名リストを持って東京まで一時帰国し、議員団への直接陳情などもしたようです。その甲斐あって、2018年の12月に議員団の総会で承認された最終的な「日本語教育の推進に関する法律案」には、以下のような変更がありました。 原案: 「国は、在留邦人の子等を対象とする日本語教育の充実、支援体制の整備、その他の必要な施策を講ずるものとすること。」 改定後: 「国は、海外に在住する邦人の子、海外に移住した邦人の子孫等に対する日本語教育の充実を図るため、これらの者に対する日本語教育を支援する体制の整備その他の必要な施策を講ずるものとする。」 以下のブログにも書いてありますが、5月の法案の概要ができた時点からの海外からの運動活動は、日本の通常の議員立法の手法からすると「空気を読めてない動き」にも映ったようですが、自分が聞いた話ですと、関係者の方々もできるだけ直接議員に話ができるように働きかけてくれたり、議員団も誠実に話をきいてくれたそうです。 https://note.mu/uichi1113/n/ne129648dad1b 通常だと、「もうすでに決まったこと」としてあしらわれてしまうような変更の陳情が「日本語教育の推進に関する法律案」で聞き入れられたのは、従来の前例踏襲的なやり方ではなく、普通の型にはまらないような人たちの声をできるだけ拾っていこうという日本語教育推進議員連盟の議員や、議員団と活動している関係者の方の考え方が現れていると感じました。 [2018年12月28日追記] 署名の場所がChange.orgに移ったそうです。リンクは、https://www.change.org/p/外国人の日本語教育を法的に位置付けるための法律の早期成立を求めますとのことでした。 [2019年5月22日追記] 「にほんごぷらっと」によると、「日本語教育推進法案」は衆院文部科学委員会を経て、衆院、参院を経て2019年の国会で成立する見込みとなったようです。今後の、この法案の海外での日系子女への日本語教育への影響がどのようになるのか非常に興味深いです。 http://www.nihongoplat.org/2019/05/21/【速報】-日本語教育推進法案が22日の衆院委員会/