北米の日本人学校補習授業校(日本語補習校)のリスト (2023年時点)

「在外教育施設における教育の振興に関する法律」が2022年に公布・施行され、日本政府が支援する日本人学校と補習授業校の在り方に大きな変化がありそうです。現時点では、具体的にどのような変化になるのかはわからないのですが、少なくとも注目度が上がっているのは確かで、これまでは、かなりバラバラになっていた日本人学校と補習授業校の系統だったリストなども公開されています。

海外での継承語教育にかなり興味がある人にしか知られていないのですが、いわゆる、「補習校」とか「土曜日学校」とか言われる学校には、日本政府が支援をしている「補習授業校」と、そうでない「継承日本語学校」というのがあります。どちらも、平日には現地校に通う日本にルーツのある子女のための学校なのですが、政府からの支援があるかどうかで大まかな学校の方針に違いが出てきます。

通常、日本政府から支援を受けている「補習授業校」は、以下のような特色があります。

  • 目的は、日本人の子女に、日本の国内で使用している教科書を使用して、日本のカリキュラムに沿った教育を行う。名目上の目的は、日本人子女が海外滞在をした後も、日本に帰国した際に日本の学校に問題なく編入するように準備すること。基本的には日本国籍を持つ子女のための学校。
  • 上記の目的は、少しずつだが変わってきている。以前は、「補習授業校」には、3-8年くらいで日本に帰国するであろう一時滞在者の子女が多かったが、最近では、日本に帰国の予定がない、いわゆる永住組の子女も「補習授業校」に通い出している。他方で、日本の国内で使用している教科書を使用して、日本のカリキュラムに沿った教育を行うという点に関しては、今も行われており、そこは変化の兆しはない。
  • 日本政府が先生の給与や、借用校の賃料などを支援してくれるので、授業料などの費用が支援のない「継承日本語学校」に比べるとある程度は安価になる。
  • 日本のカリキュラムに沿って授業を行う必要があるので、多くの永住組子女はカリキュラムについていけず、3-4年生くらいでドロップアウトすることが多い。

「補習授業校」でない「継承日本語学校」の特色は以下の通りです。

  • 目的は、アメリカに永住するであろう子女が、日本の言語や文化を継承できるようにすること。カリキュラムは自由で、中には日本のカリキュラムに近いものを採用する学校もあれば、独自のカリキュラムを作成して教育するところもある。
  • 「継承日本語学校」のほとんどは、永住組の子女の保護者や、地元の永住組の名士が主体として作っているものが多い。地元との結びつきが強く、コミュニティー形成を目標にしているところが多い。
  • 予算は、授業料からの収入だけで賄っていることが多い。地元からのサポート(施設を安い賃料で貸し出すなど)や、保護者のボランティアやファンドレイジングなどで、できるだけ授業料を安くしようとしている。
  • 永住組のカリキュラムを採用しているので、日本語能力がカリキュラムについていけずドロップアウトすることは、あまり多くない。ただ、カリキュラムは学校によってかなり違い、中には「補習授業校」とあまり変わりないカリキュラムを採用しているところもあったり、確立したカリキュラムがない学校もある。

保護者にとっては、子供を週末に日本語学校に通学させることを考える際に一番気になるところは、子供がどれくらい日本語が話せるようになるのかということだと思います。日本語能力だけを考えると、「補習授業校」の方が、最終的に身に付く日本語能力は高いと思います。ただ、実際に通う子女にとっては、教育目的の違いの方が大きな要素になります。「補習授業校」は、子女を日本人として教育する場所なので、自分はアメリカ人であるというアイデンティティーがある子女にとっては、毎週、自分のアイデンティティーと齟齬のある教育を受ける必要があり、日本語能力だけでなく、アイデンティティー形成上も大変な経験をするかもしれません。「補習授業校」に通って3-4年生でドロップアウトした子供達にとっては、「補習授業校」での経験は、自分が日本人になれなかったという悲しい証明であるという体験もよく聞きます。もし、永住組の子供たちが日系アメリカ人として生きていくことがはっきりしているのであれば、「継承日本語学校」に通学し、「不完全な日本人」としてのアイデンティティーを形成するよりも、「日系アメリカ人」としてアイデンティティーを形成する方がよい選択であるかもしれません。

2023年時点で外務省が公表している北米の「補習授業校」はhttps://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/kaigai/kyoiku/index.htmlにあります。。このリストにない学校は、「継承日本語学校」になります。

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