ニューヨークの在留邦人数(「長期滞在者」と「永住者」)の1997年から2024年の変遷

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ニューヨークでは、近年、補習校や継承語学校などで日本語を勉強する子女が増えたとか、いわゆる「駐在組」子女ではなく、「永住組」子女で日本語を学習する人が増えたという話をよく聞くようになりました。実際にデーターではどうなっているのかと思い、外務省の「海外在留邦人数調査統計」で統計データーを見てみることにしました。今回、参照したデーターは以下のウェブサイトから入手したものです。

「海外在留邦人数調査統計」は、主に大使館や総領事館に提出する在留届をものに作成されているもので、その他にも、主要な日本人会などがあるところでは、そこからもデーターを取得しているそうです。データーは、「北米」「アジア」「西欧」などの大きな地域に分けられ、また、国別、都市別にも地域わけされて提示されています。邦人は、「生活の本拠をわが国から海外へ移した人々」を「永住者」とし、「海外での生活は一時的なもので、いずれわが国に戻るつもりの人々」を「長期滞在者」として区分けしています。邦人数には、在留期間が3ヶ月に満たない短期滞在者と日本国籍を有さない邦人は含まれていません。

年 (和暦)全地域 総数全地域 長期滞在者全地域 永住者北米 総数北米 長期滞在者北米 永住者ニューヨーク 総数ニューヨーク 長期滞在者ニューヨーク 永住者
1997 (平成9年)782,568507,749274,819300,331185,144115,187
1998 (平成10年)789,534510,915278,619311,614193,073118,541
1999 (平成11年)795,852515,295280,557317,966195,739122,227
2000 (平成12年)811,712526,685285,027324,295198,699125,596
2001 (平成13年)837,744544,434293,310332,042201,940130,102
2002 (平成14年)873,641587,936285,705347,389212,147135,242
2003 (平成15年)911,062619,269291,793352,358228,078124,280
2004 (平成16年)961,307659,003302,304369,639240,033129,606
2005 (平成17年)1,012,547701,969310,578380,228244,644135,58446,360
2006 (平成18年)1,063,695735,378328,317397,585256,295141,29048,439
2007 (平成19年)1,085,671745,897339,774414,552263,756150,79651,70540,068
2008 (平成20年)1,116,993755,724361,269422,116265,377156,73949,65938,326
2009 (平成21年)1,131,807758,248373,559436,532269,480167,05256,17444,677
2010 (平成22年)1,143,357758,788384,569437,308263,221174,08757,42944,81912,610
2011 (平成23年)1,182,557782,650399,907442,900261,770181,13054,88542,37512,510
2012 (平成24年)1,249,577837,718411,859454,835263,579191,25653,36541,20212,163
2013 (平成25年)1,258,263839,516418,747472,835274,886197,94949,55638,58910,967
2014 (平成26年)1,290,175853,687436,488474,996272,355202,64143,10830,11912,989
2015 (平成27年)1,317,078859,994457,084477,507263,832213,67544,63629,39315,243
2016 (平成28年)1,338,477870,049468,428485,864261,179224,68546,91732,21714,700
2017 (平成29年)1,351,970867,820484,150491,844261,334230,51046,13730,41715,720
2018 (平成30年)1,390,370876,620513,750496,236259,675236,56147,563
2019 (平成31年)1,410,356891,473518,883518,755261,420257,33540,496
2020 (令和2年)1,357,724827,916529,808497,343234,381262,96239,850
2021 (令和3年)1,344,900807,238537,662500,786233,412267,37439,932
2022 (令和4年)1,308,515751,481557,034493,209219,435273,77438,263
2023 (令和5年)1,293,565718,838574,727489,732209,600280,13237,414
2024 (令和6年)1,293,097712,713580,384490,681207,840282,84137,345

大体の傾向をまとめると以下のようになります。

  • 全世界の在外邦人数は、1997年から2019年まで増加。1997年(782,568人)と2019年(1,410,356人)を比べると、約1.8倍になった。2019年以降は、減少傾向が続いている。この減少パターンは、コロナ禍が影響しているかと思われる。
  • 全世界の「長期滞在者」と「永住者」についても2019年までは両者とも増加傾向。「長期滞在者」は、507,749人 (1997年)から891,473人 (2019年)と1.75倍に、「永住者」は、274,819 人 (1997年)から518,883 人 (2019年)と1.88倍になる。その後、「長期滞在者」は減少傾向に入り、2024年時点では、712,713人となるが、「永住者」は増加が続き、2024年で580,384人となった。
  • 北米(アメリカとカナダ)についても、おおよその出たパターンは同じ。邦人数のピークは、2019年(518,755人)で、2019年以降は微減となる。北米の特徴としては、2020年に、「永住者」数が「長期滞在者」数を抜き、2019年以降減り続ける「長期滞在者」を「永住者」が補っているという構図が顕著になっている。
  • 以下にもあるとおり、都市別のデーターは公開方法が毎年若干異なって比較しにくいが、都市別のデータが公開されている2010年から2017年のデーターを見ると、ニューヨークに関しては、以下のような傾向がみられる。
    • 全体の総数は、2010年代の約55,000人をピークに減少傾向が続いており、2024年では37,345人となり、おおよそ33%の減少。全米の傾向と比べると、邦人数の減少はかなり激しい。
    • 「長期滞在者」と「永住者」数の割合は、「長期滞在者」数が全地域、北米の平均と比べても高い。2017年時点で、全米の「長期滞在者」と「永住者」の比率は、1.13 (261,334人/230,510人)だったが、ニューヨークは、1.93(30,417人/15,720人)。おそらく、ニューヨークは経済の中心地として多くの駐在者がいるからかと思われる。
    • 「長期滞在者」に関しては、他の地域に比べて比較的早くピークがおとづれていて2011年から減少傾向が見られる。おそらく、2007-2008年のサブプライム住宅ローン危機やリーマンショックなど経済的な要因で、ニューヨークへの駐在者数が減ったからだと思われる。2018年から2024年のニューヨークのデーターは公開されていないが、全米の傾向と同じであるとすると、この数は増えていることはないかと思われる。
    • 「永住者」のデータについても2018年から2024年には公開されていないが、これも全米の傾向と同じとすると大きな減少はないと考えられる。おそらく、ニューヨークの邦人数の大きな減少は、主に「長期滞在者」の減少だと考えられる。仮に、ニューヨークの「永住者」数が横ばいであると考えると、公開されているデーターを元にすると、「長期滞在者」の減少は以下のような数になる。
      • ニューヨークの「長期滞在者」のピーク (2010): 44,819人
      • ニューヨークの「永住者」のピーク (2017): 15,720人
      • ニューヨークの総邦人数 (2024): 37,345人
      • (37,345 – 15,720) – 44,819 =-23,194 (44,819人からの49%の減少)

というわけで、2018年から2024年のデーターが公開されていないので正確な数はわからないのですが、おそらくニューヨーク周辺の「長期滞在者」は、ここ15年で半減、あるいはそれ以上の減少があったのではないかと思われます。仮に、他の北米地域と同様に「永住者」数が増えていると考えると、もしかしたら全米の総数でみられた「永住者」の数が「長期滞在者」を抜くパターンは、ニューヨークでもすでに起きているのかもしれません。

以下、データに関する備忘録です。

  • 日本の大使館や総領事館が行なっている統計ですので、日頃から大使館や総領事館にお世話になることが多い「長期滞在者」に関してはかなり正確なデータがあるかと思うのですが、当然ながら、それほど大使館や総領事館に行くことがない「永住者」に関してはかなりのデータ漏れがあると思われます。また、何らかの事情で日本国籍を有さないけれども、日本語を母語、あるいは継承語として話す人も少なからずいると思うので、そういうデータもここには含まれていません。アメリカの国勢調査からの日系人数のデーターと比べると、かなり数がすくないのはそのせいかもしれません。
  • 「海外在留邦人数調査統計」の公開方法は、主なカテゴリー(「長期滞在者」と「永住者」との区別、「地域」や「主要都市」などの地域別での区分など)は1989年から変わっていないが、データーの提示方法は毎年少しずつ違うので長期的な調査がしにくい。 例えば、今回一番知りたい情報である、ニューヨークにおける「長期滞在者」と「永住者」数は、2010年から2017年までは調査報告書に載っているが、それ以降は総数としてしか報告されていない。それ以前は、都市別のデータは長期滞在者に関してしか公開されていない。
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