日本語補習校での戦争教育について その1

これまでは日本語能力だけを目標に継承日本語教育を行ってきたのですが、子供が十代になると、世界の歴史に関する情報なども少しづつ学校やメディアなどで学習してくるようになりました。今回は、特に気になった日本語補習校での戦争教育について書いてみようと思います。

継承日本語教育を行っている (特に補習校として、日本の学習指導要領に沿って日本語の教科書を使って指導している)学校に行っている場合は、アメリカの学校で教えられる世界の歴史と、日本の学習指導要領による世界の歴史の間に違いが出てきます。アメリカではヨーロッパ史に重きが置かれて、日本ではアジア中心の世界史に注目するという地理的な理由による違いは良いのですが、歴史の解釈や視点が異なる場合は、継承日本語を学んでいる子女は、一つの歴史的事実に対して、二つの異なった視点を学校で教えられることになります。また、十代はアイデンティティーを形成する上で重要な時期なので、その異なる視点や意見を子供たちがどのように理解するのかは、子供の将来のアイデンティティ形成には非常に大事だと思います。

戦争教育は、結構長いトピックになりそうなので、今回は、アメリカ (ニューヨーク市)の日本語補習校で、第二次世界大戦がどのように指導されているかを調べたのをまとめています。日本語補習校とありますが、正確には日本の海外子女教育振興財 (JOES)が配布している教科書(国語: 光村図書, 社会: 東京書籍)を調査しました。海外の継承日本語学校で日本の教科書を使って指導しているとすれば、おそらくこの教科書が使われているかと思います。

で、アメリカと日本語補習校の戦争教育についての単元は以下のようなものがあるようです。

日本語補習校

  • 3年 社会 (参考: 東京書籍 「新編 新しい社会」年間指導計画作成資料3年)
    • 「市の様子と人々のくらしのうつりかわり」という単元で、近所の人に町がどのように変遷してきたかという活動があるのですが、そこに「70年前ごろの様子」なども含まれており、次のような学習項目が含まれています。『資料や「近くに住むおばあさんの話」から、戦争で被害にあったこと、みんなの力で新しいまちが復興したことについて知り、感想を話し合う。「1945年の空襲でまちが焼けてしまった。」』
    • 自分の感想: あくまで単元の一つの例として日本で70年前に戦争があったという事が取り上げられていて、日本がどの国々と戦争をしていたかなどということは取り上げられてません。元々、継承日本語学校/補習授業校では、社会は教えられる機会が少ないので、おそらく戦争がこの単元で学習内容として紹介されることはないのではなかと思います。
  • 3年 国語 (参考: 光村図書 教材別資料一覧・関連リンク 3年 上巻 わかば)
    • 「ちいちゃんのかげおくり」という単元が、夏休みの後、9月ごろに導入されます。話自体は、1982年に書かれたもので、絵本ナビ (https://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=1601)などで内容を見る事ができます。「ちいちゃん」というおそらく年齢的には3年生くらいの女の子が、お父さんの出征、空襲、家族と別れ、ひとりぼっちでの防空壕の生活を一人で体験し、そして「かげおくり」の思い出と共に亡くなってしまうという、とても悲しいお話です。
    • 自分の感想: 上記の社会の単元と異なり、国語は集中的に学習される項目ですので、「ちいちゃんのかげおくり」は継承日本語学校/補習授業校では確実に教えられる単元です。話の内容を理解するためには、「出征」「白いたすきと日の丸のはた」「空襲」「空襲警報」「防空壕」など、戦争に関する語彙を紹介する必要があるので、戦争は学習の大きな部分を占めてくると思います。また、最後に同い年くらいの「ちいちゃん」が、家族が亡くなってしまい、一人ぼっちになって生活したあとに、自分も亡くなってしまうという、とても悲しいお話なので、子供達の記憶にも強く残る話なのではないかと思います。日本では、夏の終戦記念日などの直後に導入される項目なので、子供達も何らかの形で、家庭で日本の戦争の歴史は紹介されていると思われるのですが、アメリカの継承日本語学校/補習授業校で学習している児童にとっては、おそらく戦争に関しては初めて知る事が多いのではないかと思います。また、話の背景が、終戦直前の本土空襲であり、民間人の多くに死傷者がでたという日本の戦争体験なので、アメリカの学校などで戦争の話があっとしても、こう入った視点は紹介されないのではないかなと感じます。
  • 5年 国語 (参考: 光村図書 教材別資料一覧・関連リンク 5年)
    • 「たずねびと」という単元が10月ごろに導入されます。話の背景は戦後数十年後の広島で、「綾」という女の子が「原爆供養塔納骨名簿」(https://www.city.hiroshima.lg.jp/site/atomicbomb-peace/15518.html)という実際に存在する原爆で亡くなった人で遺族が判明していない人の名簿の中に自分と同じ名前の11歳の同い年の女の子の名前を見つけるところから始まります。名簿に載っている「アヤ」ちゃんを調べるため、「綾」は、広島市の平和記念公園に向かい、原爆ドームと平和記念資料館を訪ねます。原爆供養塔で、「アヤ」ちゃんのために手を合わせお祈りし、「綾」の戦争や原爆に対する気持ちが変わっていく様子を書いたお話です。
    • 自分の感想: 「たずねびと」は、広島の原爆の被爆者と遺族の平和への想いを伝えていくという趣旨の話で、戦争についての話はまったくありません。他方で、原爆の恐ろしさを伝える記述は多く、例えば、「(川の)水面が見えないくらい、びっしり人がういてたなんて。」「ご飯が炭化した弁当箱」「くにゃりととけてしまったガラスびん」「八時十五分で止まったうで時計」「焼けただれた三輪車」「石段に残る人の形のかげ」「(十四万人が)、たった一発の爆弾のせいで、この世からいなくなってしまっていたなんて。」などと書かれており、原爆がいかに恐ろしい兵器であるかということを伝え、平和に対する意識を強めるようなお話です。上記の、「ちいちゃんのかげおくり」同様、国語は継承日本語学校/補習授業校で集中的に学習される項目ですので、「たずねびと」は継承日本語学校/補習授業校では確実に教えられる単元です。
      個人的には、「たずねびと」は継承日本語学校/補習授業校では非常に教えづらい単元ではないかと感じます。一つは、継承日本語学習者の子どもたちは、日本で生活してきた子供と違い、原爆の被爆者の映像や写真などはおそらく一度も見たこともないので、上記のような言葉だけで本当に原爆の恐ろしさなどが伝わるのかどうか疑問です。「たずねびと」の理解のために、授業の際に資料として平和記念資料館に展示されている写真や映像を見せれば、子供達の話の理解も深くなると思うのですが、継承日本語学校/補習授業校で学習している子女に、被爆者の映像や写真を見せるかどうかというと、なかなか統一した意見が出せないかもしれません。実際に、継承日本語学校/補習授業校でこの単元がどのように教えられているのか知りたいところです。
      また、「たずねびと」が難しいと感じるもう一つの理由としては、アメリカ人の視点としては、原爆投下は、日本の本土へのさらなる空襲や上陸などの多大な民間人の被害を防ぐために必要であったという意見が、まだ根強く残っている点があげられます。例えば、Herbert Bixの”Hirohito and the Making of Modern Japan”でも、沖縄戦での敗北、本土への本格的な空襲などが続き、敗戦する事が確実になった後でも、日本は、ポツダム宣言の無条件降伏は受け入れられないとしソビエトへの仲裁を最後まで試みていたと記録されています(ので、原爆投下がなければ日本はポツダム宣言を受け入れなかったというニュアンスです)。実際にアメリカで、原爆の投下がどのように話されているのかは分かりませんが、少なくとも、日本人が思う(また、「たずねびと」で伝えようとしている)被爆者の悲惨な体験を二度と繰り返さないようにという思いとは違った視点があるのかもしれません。
      継承日本語話者の子女は、見た目も日本人の人が多く、日本語も上手で日本文化にも精通しているのですが、多くの人がアメリカで生まれ、平日はアメリカ人としての教育を受けているので、彼らが「たずねびと」を読んで、どのように理解するのかは興味があります。保護者は、日本人としてのアイデンティティーが確立しているので、「原爆は二度と使用してはいけない」という理解がしやすいですが、継承日本語話者の子供達はアメリカ人としてのアイデンティティーもあるので、「原爆の使用は仕方なかった。」という解釈との間でどのような意見をもつのかは気になります。

長くなってしまったので、アメリカ現地校での戦争教育については、次のブログで書こうと思います。

2 Comments

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