日系アメリカ人強制収容所 (Japanese American internment camps)についての教材

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最近、Black Lives Matterの運動が強まり、オンラインで行われている現地校でも人種問題などのトピックを急遽取り上げたりするなど、アメリカの人種問題について子供と話をすることが多くなりました。

以前、このポストでも書いたのですが、北米での継承日本語の教育的意義を考えると、アメリカで日系アメリカ人が受けた人種差別の歴史を避けては通ることができません。現在、日本語を継承語として学習している人の多くは、20世紀後半の日本の高度成長期、1965年からのアメリカの移民法改定によるアジアからの移民の増加の際に移民してきた第一世代の日系アメリカ人の子女であり、戦前、戦中の「日系アメリカ人強制収容所 (Japanese American internment camps)」を自分の歴史として語ることが少ないと感じるのですが、アメリカ人として生まれて育っていく継承日本語話者の子供たちにとっては、学校ではあまり取り上げてくれない日系アメリカ人の歴史を知っておくことは大事なことです。

例えば、自分の短大の継承日本語のクラスで取り上げる北米の継承日本語話者の歴史に関するトピックは以下のようなものです。場所がニューヨークということなので、「フレッド・コレマツ」など、あまり他の場所では取り上げられないトピックもありますが、その他は、比較的バランスの取れた歴史だと思います。

継承日本語話者の歴史

  • 1880-1924年: サンフランシスコ市民大会での日本人労働者排斥 (1900)、日米紳士協約 (1908)、アメリカ移民法 (1924年)
  • 1939-1945年: 第二次世界大戦 (1939)、真珠湾攻撃 (1941)、大統領令9066号 (1942)、第442連隊戦闘団(ダニエル・イノウエ上院議員、フレッド・コレマツ) (1944)
  • 1952-1991年: 東京オリンピック (1964)、日本の家電、自動車、電気産業の台頭、駐在ビジネスマン
  • 1991-2020年: バブル崩壊 (1991-1995)、福島第一原発事故 (2011)、フレッド・コレマツの日制定 (2010)、東京オリンピック (2020/2021)

アメリカの人種差別の歴史の中ではあまり語られないのですが、この中でも、第二次世界大戦中の1942年にフランクリン・ルーズベルト大統領が署名した大統領令9066号は、12万人の日系アメリカ人が、財産と住居を奪われ、数年にわたり強制収容所 (Japanese American internment camps)での生活を余儀なくされたという大統領令で、米国市民権を持つアメリカ人に対して、その人種によって市民権に制限を行ったというアメリカの歴史の中でも人種差別が、連邦政府の政策として行われたという悲しい出来事です。

現在、歴史的にこの事象を振り返ってみると、多くのアメリカ人が大統領令9066号は、アメリカの歴史の中でも人種による差別的な出来事だと解釈するのが現在の歴史的解釈なのですが、大統領令が発行された際には「日系アメリカ人は日本のスパイなので、アメリカの安全を守るためには、市民権を持ったものであっても強制収容所に集められるのは当然だ」という世論が多くを占めていました。特にニューヨークでは、当時の市長のラガーディア市長による日系のニューヨーク市民をスパイや国家的危機として対応したという資料が多く残っています。フレッド・コレマツ氏のように、日系アメリカ人の人権と自由を訴える動きはあったようですが、当時は、日本による真珠湾攻撃など、日本を敵視した報道や世論が主要であり、「人種による迫害も国防のためには仕方がない」という考え方にあったようです。

日系アメリカ人強制収容所の歴史は、アメリカの「自由と平等」の理念が、資本主義、民主主義による政治権力、世論形成の中で、どうやったら保証されるのか、また、「自由と平等の理念」は普遍的なものではなく、社会背景や世論によって「自由と平等の理念」の解釈は異なることがあるという歴史的教訓だと思います。今の、Black Lives Matterとは歴史的背景は違いますが、問題の根幹には同様な課題があるとも感じます。

今回、子供に日系アメリカ人の強制収容所の歴史について話をするときに利用した資料です。特に、George TakeiのTED talkや、”They Called Us Enemy”は、子供視点から話されていて、子供も共感しやすいかったように感じました。

  • Densho resources website (https://resourceguide.densho.org)
    • 伝承 (Densho) Resource Guideは、これまでにJapanese American Internmentについて出版された本やドキュメンタリーがデータベースとして整理されています。学年ごとにあった資料をサーチしたり、無料でインターネットで使えるものだけを検索したりと、非常にしっかりしたデータベースがあります。伝承のページには、他にも、実際にキャンプで生活をしていた人たちのoral history projectなどもあり、そちらも実際に歴史を体験した人の経験や、意見などが聞けて、子供でも集中して聞けるものが多くありました。
  • Children in Internment Camps (http://amzn.com/dp/B00TC233UG)
    • 2015年に制作されたドッキュメンタリー映画です。子供向けではないドキュメンタリー作品なので、かなり難しいですが、子供に日系アメリカ人の強制収容所の話をする際にはキッカケが多くあると思います。現在、Amazon Primeで視聴できます。
  • TEDTalk: Why I love a country that once betrayed me by George Takei (https://www.ted.com/talks/george_takei_why_i_love_a_country_that_once_betrayed_me)
    • スタートレックに出演していたアジア人で初めて全米の有名俳優になったGeorge TakeiのTED Talkです。George Takei自身、幼いときに強制収容所で生活した経験があり、その体験からアメリカの民主主義のあり方について問いかけている、とても素晴らしいTED Talkです。上記の資料と同じく、子供の視点からの話なので、子供との会話にはつなげやすいです。あと、George Takeiの俳優としての才能か、全般的に、視聴者を魅了する話になっています。今回の資料の中で一番おすすめです。
  • George Takei’s Allegiance (musical) (http://allegiancemusical.com)
    • 上記のGeorge Takeiが、日系アメリカ人強制収容所を題材にしたブロードウェイパフォーマンスです。実際のブロードウェイでのパフォーマンスは、2015年から1年程度で終わっているのですが、その収録DVDが発売されています。2020年の6月には、西海岸での公演も予定されており(COVID-19のためどうなっているのかはわかりませんが)、それを記念して、様々な企画もおこなわれているようです。自分は、まだみていないのですが、ミュージカルなので、あまり小さい子供向けではないかもしれません。
  • They Called Us Enemy (http://amzn.com/dp/1603094504)
    • George Takei氏による、自身の日系アメリカ人強制収容所の体験を題材にしたgraphic comics(マンガ)です。始まり方が、上記のTEDTalkと関連しており、マンガなので、子供でも読みやすいかと思います。内容的には大人を対象に書かれており、複雑な感情や体験、戦争による人の死なども書かれているので、子供と読む際には、誰かが一緒に読んであげた方が良いと思います。アマゾンの広告によると、New York Times Bestsellerに選ばれているそうです。

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