- Alba, R., Logan, J., & Stults, B. (2002). Only English by the Third Generation? Loss and Preservation of the Mother Tongue among the Grandchildren of Contemporary Immigrants. Demography, 39(3), 467-484.
社会学系の研究で、継承語研究者の中ではあまり知られていない論文ですが、自分はとても良い論文だと思うので紹介しています。
アメリカの国勢調査資料に基づく調査で、さまざまな言語が二世、三世のアメリカ人の間でどれくらい話されているかというのが報告されています。継承語が話されているかどうかの指標としては、二世、三世のアメリカ人が「家庭で英語のみを話す」かどうかとされています。これは、家庭で英語以外の言語が話されていれば継承語がまだ保持されているとみなすというもので、正確な指標とはいえませんが(例えば、日系二世の話者で、日本語はまったく話せないが、スペイン語話者と結婚したので家庭ではスペイン語を話してるケースなど)、統計に基づく研究ですので、ある程度の誤りは問題ないのだと思います。
この論文によると、日本人では、日系二世で家庭で英語のみを話すのは67.7%、日系三世では97.4%との事です(参考まで、中国人は、二世では29.4%、三世では91.4%、韓国人は二世が42.5%、三世が90.4%、メキシコ人(スペイン語)は、二世が12.3%、三世が64.1%)。これを見ると、いかに日本語を保持するのが他の言語と比べて難しいかがわかります。著者によりますと、アメリカではどの言語でも三世になるとほぼ確実に英語以外の言語は淘汰されてしまうとの事です。
他にも、どのような要素が継承語の保持と相関性があるかも検証されています。統計的には二つの要素が重要との事で、一つ目は地域でのサポート (Ethnic Community or Non-ethnic Community)、二つ目が同言語話者間での結婚 (Parental endogamy or Parental exogamy)との事です。中国人のケースでこの二つの要素を見ると、この二つの要素が継承語保有に有利になっている場合は中国系二世で4%のみが継承語を喪失し、中国系三世では73.8%が喪失するそうです。他方、この二つの要素が継承語保有に不利な場合は、中国系二世で77.1%が継承語を喪失し、中国系三世で96.7%が喪失するそうです。
中国語ではありませんが、自分のケースではニューヨークなのでEthnic Community、日本語がわかるものの連れ合いの母国語は英語なのでExogamyですので、自分の子供が日本語を喪失する確率は55.7%、孫は98.8%で日本語を喪失するということになります。孫の代まで日本語を継承語として保持するのはを恐ろしく難しいんだなぁと感じます。