本業の方で、ACTFL OPIなどのアメリカの言語テストを調査する仕事があり、それぞれのテストの難しさを比べる表を作成しました。言語テストには、会話だけを評価するもの(ACTFL OPIなど)や、readingやgrammarなどの受動的な能力だけを評価するテスト(CLEPなど)があり、なかなか二つのテストを比べるのは難しいのですが、テストの受験者の視点からすると、大体自分のスキルがどの程度なのか、どのレベルのテストを受ければいいのかなどの指標が知りたいところなので、こういった比較表が必要なのだと思います。
この表を作った経緯は、アメリカの高等教育機関では、生涯教育によるスキルを評価し、単位化して大学での学位取得の促進をしようという動きが強くなってきています。Credit for Prior Learningというような名目のプログラムが、あちこちの大学でここ数年でできてきていて、背景としては、アメリカの高等教育に対する不信感、学齢期の子供が不足になる2030年以降の大学の生き残り、実地的なスキル重視の教育などの要素が挙げられています。Credit for Prior Learningのコンセプトは昔からあり、一番馴染みの深いところでは、高校で大学の単位を持つクラスであるAPなども、Credit for Prior Leraningの一部です。これまでのAPなどの他に、テストを受験するだけで大学の単位に認めてもらえる可能性があるということで、日本語のクラスをとらなくても十分な日本語能力のある継承日本語話者には良い傾向なのだと思います。
今回作成した言語テストの比較表です。
それぞれのテストの内容はこんな感じです。
- ACTFL OPI/WPT: 米国で広く使われる言語運用能力評価群です。OPI/OPIc (話す)、WPT (書く)、LPT (聞く)、RPT (読む)などがあり、日本語でも受験できます。米国内の大学、教育機関、採用、資格認定で非常に知名度が高く、特に、ACTFL OPIを単位として認める大学は増えています。試験結果は、合否ではなく、Novice Low から Distinguishedまでの熟達度評価です。
- CLEP: APをおこなっているThe College Boardが運営する言語テストですが、スペイン語、フランス語、ドイツ語のみで実施されていて、今のところ日本語試験はありません。
- AP Japanese Language and Culture: College Boardが運営する高校向け日本語科目です。大学の中級日本語4学期目相当とされていて、APのクラスを受講した人だけがAPのテストを受験できます。測定されるのは、聞く、読む、書く、話すの4技能で、文化理解も問われます。結果は、合否ではなく 1-5点の点数がつけられ、大体の大学ではScore 4以上が単位の対象になっていることが多いです。
- IB Japanese (Language B / ab initio): International Baccalaureate (IB) Diploma Programmeの言語科目です。Language B は既習者向け、ab initio はほぼ初学者向けです。日本語でも実施されています。IBは国際的に認知度が高いですが、一般の米国高校ではIBのカリキュラムを行っているところが少ないので、受験できる人はAPより限定的です。測定されるのは、書く、聞く、読む、口頭のやりとりで、1-7点の評価が行われます。
- ILR/DLPT: 米国国防総省系の言語試験です。DLIFLC が運用し、日本語版もあります。軍隊や外交官になる人が言語評価をされる際に使われる評価方法で、当初の開発がACTFLが行ったこともあり、ACTFLのOPI/WPTとの相関性が非常に高いです (というか、ACTFL OPI/WPTは、ILRのスピンオフプロジェクトでした)。評価は、0-5で行われます。5の評価がつくことは母語話者でもほぼないくらいの最高度の言語運用能力が必要とされます (5がつく人は、例えば、ニュースキャスターのように日本語も話せるし、ラッパーのような日本語もできて、その上、関西弁や沖縄弁も使いこなせるみたいな感じです)。
- Cambridge / AICE Japanese: Cambridge International AS Levelにも日本語があります。国際校では知られていますが、日本語についてはかなりニッチで、あまり需要がないので廃止される可能性が高いテストです。
- CEFR: CEFR は欧州系の熟達度枠組みです。アメリカの大学や高校の言語評価は、ACTFLで行われ、ヨーロッパの大学や高校の言語評価はCEFRで行われています。日本の英語教育はイギリスの影響を強く受けているので、日本での言語の国際的な評価などはACTFLではなく、CEFRで行われることが多いです。国際交流基金の日本語教育などもCEFRを使っています。


