- Li, G., & Wen, K. (2015). East Asian heritage language education for a plurilingual reality in the United States: Practices, potholes, and possibilities. International Multilingual Research Journal, 9, 274–290.
北米における東アジア言語(中国語、韓国語、日本語)の継承語学校についてまとめた論文です。もともと発表されている研究が少ないので、日本語についてはあまり多く書かれていませんが、全体的に東アジア言語を継承語として保持する上で共通する課題などについて議論されています。
実際に共通する課題としては、以下のようなことが述べられています。
- 保護者の継承語保持への興味は高いが、社会経済的に上昇志向の家庭では、英語など他の教育に時間をかけて、継承語を軽視する傾向が多い。
- 継承語保持に興味がある保護者は多いが、それに対してかけている時間や労力、継承語教育の能力は、保護者が考える継承語保持に対して十分でないことが多い。
- 中国語、韓国語、日本語の全てで継承語学校(community HL schools)という考え方で統一された学校はない。例えば、中国語では大まかに中国本土出身の子女向けで簡体字(Simplified Chinese)を使っている継承語学校と、台湾出身の子女向けで繁体字(Traditional Chinese)を使っている継承語学校に分かれている。韓国語では、教会に付属する継承語学校が多くを占めるが、宗教教育を行わない継承語学校もそれに対応する形で存在する。日本語では、日本政府が支援する補習校と現地のコミュニティベースの継承語学校が存在する。全ての学校で継承語教育を行っているが、継承語を教える意義や方針などは異なる。
- 継承語教育は、中国語・韓国語・日本語のすべてにおいて、継承子女のアイデンティティ形成やコミュニティ形成に役立っている。
- 日本語の継承語学校で見られるような問題(ボランティアベースの教職員、教員のトレーニング不足、予算不足、教材不足、学校設備不足など)は、中国語・韓国語・日本語のすべてに共通する。また、継承語教室に通う子女が達成できる言語レベルは、東アジア言語では総じて(スペイン語などと比べて)低い。
- 家族、コミュニティ、K-12での外国語教育などが協力していく必要がある。