Kondo-Brown, K. (2014). Japanese in the United States. (23). In T. G. Wiley, J. K. Peyton, D. Christian, S. C. Moore, & N. Liu (Eds.), Handbook of Heritage, Community, and Native American Languages in the United States: Research, Policy, and Educational Practice. (pp. 244-252). New York, NY: Routledge.
Handbook of Heritage, Community, and Native American Languages in the United States…というthe Center for Applied Linguisticsの所長であったTereence Wileyらが2014年に編集した本のチャプターです。
この本は、人口統計から考えるとアメリカの外国語教育の重要な要となる継承語教育について幅広いトピックを取り扱っています。継承語教育のトピック（例えば、歴史、定義、補助金など）の他に、言語別にアメリカでの継承語教育がどのように行われているかが書かれているのですが、その言語の一つとしてKondo-Brown先生が日本語について書かれています。まず、この本で取り扱われている言語と、その言語がどのようにグループ分けされているかが面白いと感じました。日本語は、”Languages with Strong Community Connections”というグループに含まれていて、継承語話者の多くを占めるスペイン語などの言語や、アメリカでこれから増えていくと思われるアラビア語、中国語などの言語とは違うグループに含まれています。
- Commonly Taught Languages: Spanish, French, German, Italian, and Portuguese
- Critical and Less Commonly Taught Languages: Arabic, Chinese, Hindi, Russian
- Native American Languages: Navajo, Pueblo Langauges, Miami (Miami-Illinois or Myaamia language), Hawaiian, Warm Springs languages
- Languages with Strong Community Connections: Japanese, Korean, Yiddish, ASL, Khmer, Filipino
Kondo-Brown先生によるアメリカの日本語教育（継承語以外の日本語教育も含む）の章の要点は以下の通りです。
- 海外に居住する日本人の海外永住者や長期滞在者は、2011年時点で114万人にのぼる (外務省, 2012)。そのうちアメリカには、38.8万人が居住している。日本国籍を有さない子女を含めると、これ以上の数の子女が、「海外子女」、「帰国子女」、「移動する子供たち」として海外に居住する。
- 日本語は、アメリカの教育システム(K-16)でアジア言語の中では一番最初に教科として取り入られた言語である (Jorden & Lambert, 1991)。学生の登録数もアジア言語ではもっとも多く、ハワイ州では最も頻繁に教えられている言語である。日系移民のための日本語教育施設としては、コミュニティーが作る日本語学校、日本政府による日本語補習授業校（補習校）、日本人学校などがある。
- 最初のアメリカへの日本人移民は、1867年のハワイへの移民から始まった。1893年には、最初の日本人学校も作られた。
- 週末に日本語による指導をする「補習校」は、2011年時点で、全世界に203校あり、そのうち87校がアメリカに存在する。カリキュラムは、基本的に、国内の国語教育と同様のものである。
- 高等教育では、日本語のクラスを履修する学生は(2014時点で)増加の傾向がある。2002年と2006年の全米の高等教育機関での日本語履修者の数は、27.5%増加した。大学の中には、かなりの数の継承語話者がいるところもあり、そういった学校では、敬語などに重点をおいた”Japanese as a heritage language class”を開講するところもある。
