PS147のJapanese Dual Language Programが2019年からはPre-KからGrade 4まで行われるということで、軌道に乗り始めてきたそうですので、ちょっとニューヨーク市におけるDual Language Programを含むBilingual Programのこと全般について書いてみようと思いました。ニューヨーク市の2017年時点のBilingual Programの統計的をNYC OpenDataで引っ張ってきて、簡単な分析をしました。
最初はBilingual Programの場所に関するデーターです。
Bilingual Programs in New York City 2017-2018: Borough
Borough | Frequency |
---|---|
Brooklyn | 157 |
Bronx | 127 |
Manhattan | 109 |
Queens | 103 |
Staten Island | 12 |
場所的には、Staten Islandを除く全ての場所に平均的に分散しています。
Bilingual Programs in New York City 2017-2018: Program
Program Type | Frequency |
---|---|
Transitional Bilingual Education | 292 |
Dual Language | 216 |
プログラムのタイプですが、Dual Language Programと、Transitional Bilingual Educationに分けられます。どちらのプログラムも英語以外の言語(家庭言語)を学校の指導に使うのですが、この二つのプログラムの違いはDual Language Programが英語と家庭言語の両方の保持を目的とするのに対し、Transitional Bilingual Educationは家庭言語の学校での使用頻度を年々減らしていき、最終的には、英語のみのクラスに編入していくという目的があります。
パッと聞くと明らかにDual Language Programの方がいいじゃないかと思うのですが、プログラムそれぞれのいろいろな事情でTransitional Bilingual Educationを選択する学校が多くあります(統計上は半数以上がTBE)。よくある事情としては、
- 子供達の家庭言語の使用頻度が高い言語の場合は、学校で家庭言語を保持する努力をしなくても、家庭言語を話し続けるだろうという妄想がある。よくある例としては、スペイン語を家庭で話す子女がTBEに2-3年くらいいたら英語でも授業が理解できるようになるので、TBEを卒業して英語だけのクラスに行くというパターンがある。
- もともとBilingual Programは、英語で授業しても理解できない子女に英語で授業をするのは憲法上の違法だという理念の上にできているので (e.g., Lau vs. Nichols (1974))、英語が理解できない子女には、最初の2-3年は家庭言語で授業を行おうという理由で、bilingual programが存在している (NYCにおけるbilingual educationの法令に関しては、https://japanese-schools-newyork.com/?p=1174を参照ください)。そういう制度上の取り決めのためにbilingual programが存在している時は、TBEであることが多い。
- バイリンガルで高学年を指導できる先生がいない。高学年になればなるほど、専門的な教科が増えてくるので、高学年を教えられて、しかもバイリンガルの指導免許をもった先生は限られている。
- 学校と家庭での家庭言語の重要度の認知度が低い。家庭によっては、家庭言語の重要性が認識されておらず、子供には学校では家庭言語よりも英語をしっかり習得してほしいという希望があったりする。
- 補助金の申請がややこしかったり、でにくい。Bilingual Programは、Elementary and Secondary Education ActのTitle IIIというところから補助金がでるが、もともとTitle IIIは非英語話者への英語習得のための補助金なのでDual Language Programは補助金の申請がややこしかったり、出にくかったりする。
Bilingual Programs in New York City 2017-2018: Language
Language | Frequency |
---|---|
Spanish | 399 |
Chinese | 66 |
French | 10 |
Bengali | 6 |
Haitian Creole | 6 |
Yiddish | 6 |
Arabic | 5 |
Russian | 5 |
Hebrew | 1 |
Japanese | 1 |
Korean | 1 |
Polish | 1 |
Urdu | 1 |
言語的には、やはり大多数のBilingual Programはスペイン語で、その後、中国語 (Mandarin or Cantonese)、フランス語 (おそらくHaitian Creole話者向けのフランス語プログラム)、ベンガル語、ハイチ語、イディッシュ語などが続きます。日本語のプログラムは、ニューヨーク市で一つだけです。移民の数では日本語話者よりも多い韓国語やウルドゥー語でも一つだけしかBilingual Programがないことを考えると(ヒンディー語にいたっては一つもプログラムがない)、PS147が日本語でDLPを行えるのは、学校関係者や保護者の努力があってのことだと思います。
で、言語の分配とプログラムを場所ごとに見てみると、面白い傾向がわかります。
Bilingual Programs in New York City 2017-2018: Language by Borough
Bronx | Brooklyn | Manhattan | Queens | Staten Island | |
---|---|---|---|---|---|
Arabic | 1 | 4 | 0 | 0 | 0 |
Bengali | 1 | 1 | 0 | 4 | 0 |
Chinese | 0 | 30 | 15 | 21 | 0 |
French | 0 | 8 | 2 | 0 | 0 |
Haitian Creole | 0 | 6 | 0 | 0 | 0 |
Hebrew | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 |
Japanese | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 |
Korean | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 |
Polish | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 |
Russian | 0 | 4 | 1 | 0 | 0 |
Spanish | 125 | 94 | 91 | 77 | 12 |
Urdu | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 |
Yiddish | 0 | 6 | 0 | 0 | 0 |
Borough毎の全体的なプログラムの数はStaten Island以外は大体100-150程度と同じくらいなのですが、言語の多様性に関してはBrooklynがダントツに多いです(その分スペイン語のBilingual Programの数が少ない)。逆のパターンはBronxで、ほぼ全部のプログラムがスペイン語のBilingual Programです。QueensとManhttanに関しても、Bronxと同様なことが言えるかと思います(中国語のプログラムがあるのは、DowntownのChinatownやFlushingなどの中国コミュニティーがあるため)。
Bilingual Programs in New York City 2017-2018: Program by Borough
Bronx | Brooklyn | Manhattan | Queens | Staten Island | |
---|---|---|---|---|---|
Dual Language | 32 | 76 | 58 | 42 | 8 |
Transitional Bilingual Education | 95 | 81 | 51 | 61 | 4 |
同様に、Brooklyn(とManhattan)でのDual Language Programの比率の多さは、他の地域と比べて格段に高いです。こうしてみると、PS147があるBrooklynでのBilingual Programへの意識の違いが如実にあわわれます。