一般的に出版された発行物ではないのですが、日本語の継承語話者に関する日本政府の取り組みについて非常に詳しく書いてあるレポートですので、紹介したく思いました。
- 総務省 (2015). グローバル人材育成に資する海外子女 帰国子女等教育に関する実態調査. 総務省 (Ministry of Internal Affairs and Communications of Japan). Retrieved at http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/97809.html
総務省の行政評価局というところが2015年に作成した「グローバル人材育成に資する海外子女 帰国子女等教育に関する実態調査」という調査レポートで、主に、(1) 日本人の海外子女に対する海外での支援と、(2)日本人の海外子女の帰国後の支援についての調査がまとめられています。(1)に関しては、政府が支援する海外での日本人学校及び補習校に関する情報が非常に詳しくかかれています。特に、アメリカ、ドイツ、フランスなどの他の主要国が、それぞれの国の海外子女に行なっている支援を調査して日本と比べている点は非常に興味深いです。
現在の法令上では、日本人学校及び補習校は日本に帰国を予定する子女への支援なのですが(海外に拠点を移してしまった永住者子女は基本的には含まれていない)、継承語話者に関してもかなり理解のある内容で、いわゆる帰国の予定が定まっていない「永住組」の増加による補習校の需要の増加などについても詳しく書かれていました。あと、補習校(継承語教育)の所管省庁が、文部科学省と外務省の間で抜け落ちているなぁというのが自分の感想です。
レポートは、以下のような構成で発表されています。
- グローバル人材育成に資する 海外子女・帰国子女等教育に関する実態調査 結果報告書
- グローバル人材育成に資する 海外子女・帰国子女等教育に関する実態調査 調査結果に基づく勧告
- 諸外国の海外子女・帰国子女教育に関する調査研究 報告書
この調査による各省庁への勧告内容は以下の通りです。
- 在外教育施設の設立・運営の推進に関して、日本人学校の前身となっていることが多い補習授業校について、新規援助要請は増加しているが、 新規承認は減少 (平成19~22年度:29施設中18施設承認(62.1%)→平成23~26年度:43施設中6施設承認(14.0%))
- 外務省は、政府援助が非承認となっている教育施設の解消に向けた方針の策定をするべきである。
- 外務省、文部科学省は、同教育施設への予算を伴わない援助の実施をすべきである。
- 日本人学校における教育の推進に関して、海外の児童生徒数は増加しているが、派遣教員数は減少している (児童生徒数: 平成17年度1万7,658人 → 平成26年度2万1,027人(19.1%増) / 派遣教員数: 平成17年度1,267人→ 平成26年度1,138人(10.2%減))
- 約8割の日本人学校で、国内に比べて業務負担が重く 教育に支障が発生との意見
- 文部科学省は、グローバル人材育成強化に 係る具体の目標・取組・工程の策定をすべきである。
- 文部科学省は、上記の取組実施及び児童生徒 数増加に対応するための、派遣教員確保方針の策定をすべきである。
- 上記の方針を踏まえた、教員派遣の協力が低い都道府県教育委員会等への要請徹底、シニア派遣教員制度の拡充をすべきである。