新時代海外移住者の日本語継承

カルダー, 淑子. (2019). 新時代海外移住者の日本語継承: 日本語教育推進法案に対する署名運動から. In 喬. 宮島 et al. (Eds.), 開かれた移民社会へ. (pp. 234-241). Tokyo, Japan: 藤原書店. 「日本語教育推進法案」が2019年の国会で通過しましたが、その原案が公開された2018年から、日本語教育の推進の対象に、国内の移民者および在外(海外)の一時滞在者に限らず、海外での「日本にルーツを持って海外に永住する人」にも対象を広げようと活動を続けられているカルダー淑子先生の論文です。 「日本語教育推進法案」に関する運動に関しては、この論文が書かれてから国会通過まで紆余曲折があったのですが、この論文では深く触れられていません。主な内容は、「日本にルーツを持って海外に永住する人」に対する日本語教育の必要性について、北米だけでなく他の地域の特色なども考察して書かれています。また、海外で日本語教育を受けて日本語と現地語のバイリンガルとして活躍できる人材が、現在の日本社会や企業では良い意味でも悪い意味でも特別視されており、日本社会、企業がバイリンガル人材を活用できる場所を提供できているのかという疑問も投げかけらています。

プリンストン日本語学校の継承語(永住組)コースの実践報告

Calder, T. M. (2008). 補習校における母語支援: プリンストン日本語学校の実践から. In MHB研究会夏期研究大会 バイリテラル・バイカルチュラルの育成を目指して 実践と課題, xxx, xxx, 2008 (pp. 28-37). ニューヨークにある補習校(日本の文部科学省から支援を受けている土曜日日本語学校)で、帰国を前提とした日本のカリキュラム以外に、継承語(永住組)コースが2007年から開始されたそうで、その取り組みや、課題などに関する論文です。継承語コースは素晴らしいというような論文ではなく、現場で直面する課題や、理想と現実の違いなどが書かれているとても良い報告だと感じました。 ただ単純に補習校の日本語の目標値を下げるのではなく、継承語としての日本語を独自の言語集団として認めようという試みであるのが読み取れます。日本語コミュニティーでは、よく母語話者と非母語話者がはっきりと分別されている文化がありますが(「日本人」は日本で生まれた日本語を話せる集団で、それ以外は完全な「日本人」じゃないというような感じ)、他の言語コミュニティー(特にスペイン語コミュニティー)では、「母語話者」というのは一体何かという問いが非常に頻繁にされていると感じます。 子供が継承語話者であったり、日本語継承語の学校やクラス運営する上で、いろいろ参考になる文献だと感じました。

永住組子女が週末学校で獲得できる継承語日本語能力

Nakajima, K. (2016). 海外日系児童生徒とバイリンガル教育. (Ch. 9). In バイリンガル教育の方法: 12歳までに親と教師ができること. (pp. 181-200). Tokyo, Japan: ALC. 日本と英語のバイリンガル教育で有名なトロント大学名誉教授/名古屋外国語大学の中島和子教授が書かれた「バイリンガル教育の方法」に同氏が1980年代にトロントの日本人補習校(土曜日学校)で行った(永住組)日系人子女のデータがあり、とても興味深かったので紹介しています。 データの対象はトロントで日本語学習を土曜日補習校で10年継続した日系人子女を10年間に渡り継続して調べたものです。対象者は、高校生(11年生と12年生)の31名で、調査されたのは、 以下の点です。 日本語の会話力(個人インタビュー)、読解力(小学4年生用標準テスト/トロント大の日本語テスト)、作文力(課題作文「子供時代の思い出」) 家庭での使用言語 子供の日本語補習校への態度 […]