『小学校~それは小さな社会~』 / “Instruments of a Beating Heart” (2024)

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2025年のオスカーの短編映画部門にノミネートされた”Instruments of a Beating Heart” (director: Ema Ryan Yamazaki)という、日本の公立小学校の教育文化を紹介する作品があるのですが、この作品は、継承日本語教育を行う際に、よく保護者が希望する日本語教育以外の「日本の文化」や「日本人としての教育」を上手に紹介していると思いました。

“Instruments of a Beating Heart”は、小学一年生のアヤメちゃんという子が、新一年生を迎えるための音楽団に参加するという背景で始まります。アヤメちゃんは、最初に興味があって参加を希望するのですが、オーディションに受からず友達と泣いてしまったり、自主練習に参加できずに失敗して厳しく先生から怒られて練習に行くのが怖くなってしまったりと、いろいろ大変な試練に遭います。

ドキュメンタリ内ではっきりと解説とかされたりしないのですが、随所で、1年生でも音楽団など全体での活動における個人の責任を厳しく指導する姿や、集団内で一人が厳しい状況に置かれていたら自然に小さい子供たちが困っている子供を助ける姿などが、日本の学校教育の根底にある理念だと紹介されています。他にも、子供が自分の掃除や給食の準備をしていたり、給食を時間内に食べないといけないとタイマーで食事の時間が制限されている教育方法が紹介されていて、アメリカでの個人主義的な教育とは一線を画した日本の教育倫理や理念が上手に紹介されています。

最後の方に、1年生の小さい子供達が音楽発表の前に、「私達て何なんだろうね。」「きっと、私たちは心臓の一部で、1人こんな風にずれたらもう心臓はできないよ。」と言っているのは協調生や社会性重視の教育が表れていると思います。

“Instruments of a Beating Heart”は、同監督による”The Making of a Japanese” (2023)の短編で、”Instruments of a Beating Heart”はNYTのOp-Docsシリーズで公開されているのですが、”The Making of a Japanese”は一部の映画祭 (JAPAN CUTS 2024など)以外ではアメリカ国内での配給が行われていません。

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