継承日本語の研究

継承語に関する研究について紹介しています。日本語に特化した研究以外にも、他の言語の研究なども紹介し、総合的に継承語の維持について考えています。他にも、継承語の研究に関する入門書なども紹介しています。

  • ニューヨーク市のDual Language Programについて

    ニューヨーク市のDual Language Programについて
    PS147のJapanese Dual Language Programが2019年からはPre-KからGrade 4まで行われるということで、軌道に乗り始めてきたそうですので、ちょっとニューヨーク市におけるDual Language Programを含むBilingual Programのこと全般について書いてみようと思いました。ニューヨーク市の2017年時点のBilingual Programの統計的をNYC OpenDataで引っ張ってきて、簡単な分析をしました。 最初はBilingual Programの場所に関するデーターです。 場所的には、Staten Islandを除く全ての場所に平均的に分散しています。 プログラムのタイプですが、Dual Language Programと、Transitional Bilingual ...
  • English Language Learnersに関するワークショップに行ってきました

    English Language Learnersに関するワークショップに行ってきました
    上の子が通っているpublic schoolで、English Language Learners (ELL)に関するワークショプがあったので行ってきました。とても有益なワークショップでしたが、参加者は3名だけで、結構バイリンガルの子供が多い学校なのに保護者の興味が薄いのにはびっくりしました。 で、最も印象深かったのは、ニューヨーク州の規則で英語話者でない児童へのサポートを行うように規則があるのですが、その実施の仕方は、各学校でかなり異なるということです。中には、学校の大部分の児童がELLで、学校全体で児童の英語獲得に力を入れている学校もあれば、ほぼ全体が英語のみを話す児童で、ELLに対するサポートに関するノウハウが理解されていない学校もあるようでした。 日本語のDual Language Program (DLP)があるPS147など、ELLのサポートにDLP (50%英語話者、50%多言語話者がまざったクラスで、英語と児童の過程言語の二言語で指導するプログラム)はどんな感じですかという質問をしたのですが、実際上は、大体のところがtransitional programで大体DLPでも2-3年くらいで児童が英語だけのクラスに移行してしまうという話でした。ですので、DLPで例えば5年生に在籍する学生は、DLPをずっとKindergartenから続けてきたわけではなく、3年生くらいで移民してきた児童の子供がいるという感じみたいです。PS147の日本語のDLPでは、常に日本語を母語とする移民児童がいるわけでないので、そういう場合はどうなるのかと思いました。 ワークショップで大事だと思ったのは以下の通りです。 子供がELLと判定された場合は、学校はニューヨークの州法 (NYSED Commissioner Regulations Part 154 ...
  • 「日本語教育の推進に関する法律案」(日本語教育推進法案)

    「日本語教育の推進に関する法律案」(日本語教育推進法案)
    日本の超党派で作られた日本語教育推進議員連盟が、「日本語教育の推進に関する法律案」(日本語教育推進法案)という法案の作成を目標にしているということで、海外に住む継承日本語話者にどのような関係があるのかをまとめてみました。 2018年の5月で発表された案では、国内の外国人居住者への日本語教育という面が重要視されていて、海外で日本語を保持していく継承語話者への対応が記載されていなかったのですが、プリンストン日本人学校のカルダー淑子先生などが中心となって、この法案の対象に海外継承日本語教育を盛り込んでほしい旨の要請文が2018年7月に日本語教育推進議員連盟に送付されました。 http://www.nihongoplat.org/2018/07/19/特集・日本語議連-日本語教育推進基本法の原案へ/ また、「日本語教育推進基本法案への要請文」への賛同署名活動も始まりました(以下の通り、すでに「日本語教育の推進に関する法律案」では継承語話者に対しても、かなりの記述が含まれるようになったのですが、今も署名活動は続いているそうです。)。 https://sites.google.com/site/keishougo/kihonhoan?fbclid=IwAR1QfBg_vMzgqIZAoY9L4tBoLVtQxXYzW74tebFMzFUhKIOLICtKgtrvyo0 カルダー先生を含め、海外で継承語教育に従事している人たちの複数の方が、署名リストを持って東京まで一時帰国し、議員団への直接陳情などもしたようです。その甲斐あって、2018年の12月に議員団の総会で承認された最終的な「日本語教育の推進に関する法律案」には、以下のような変更がありました。 原案: 「国は、在留邦人の子等を対象とする日本語教育の充実、支援体制の整備、その他の必要な施策を講ずるものとすること。」 改定後: 「国は、海外に在住する邦人の子、海外に移住した邦人の子孫等に対する日本語教育の充実を図るため、これらの者に対する日本語教育を支援する体制の整備その他の必要な施策を講ずるものとする。」 以下のブログにも書いてありますが、5月の法案の概要ができた時点からの海外からの運動活動は、日本の通常の議員立法の手法からすると「空気を読めてない動き」にも映ったようですが、自分が聞いた話ですと、関係者の方々もできるだけ直接議員に話ができるように働きかけてくれたり、議員団も誠実に話をきいてくれたそうです。 https://note.mu/uichi1113/n/ne129648dad1b 通常だと、「もうすでに決まったこと」としてあしらわれてしまうような変更の陳情が「日本語教育の推進に関する法律案」で聞き入れられたのは、従来の前例踏襲的なやり方ではなく、普通の型にはまらないような人たちの声をできるだけ拾っていこうという日本語教育推進議員連盟の議員や、議員団と活動している関係者の方の考え方が現れていると感じました。 署名の場所がChange.orgに移ったそうです。リンクは、https://www.change.org/p/外国人の日本語教育を法的に位置付けるための法律の早期成立を求めますとのことでした。 「にほんごぷらっと」によると、「日本語教育推進法案」は衆院文部科学委員会を経て、衆院、参院を経て2019年の国会で成立する見込みとなったようです。今後の、この法案の海外での日系子女への日本語教育への影響がどのようになるのか非常に興味深いです。 http://www.nihongoplat.org/2019/05/21/【速報】-日本語教育推進法案が22日の衆院委員会/
  • 国際交流基金の日本語教育機関調査データベース(日本語教育機関データーベース)

    国際交流基金の日本語教育機関調査データベース(日本語教育機関データーベース)
    日本の国際交流基金 (Japan Foundation)が全世界で三年毎に「日本語教育機関調査」という調査を行なっています。目的は、「世界の日本語教育の現状を正確に把握するため」で、調査の結果はデータベースとしてウェブサイトで公開されています。 https://www.jpf.go.jp/j/project/japanese/survey/result/ https://jpsurvey.net/jfsearch/ データベースは非常に細かく分けられており、以下のような基準で検索が可能です。 地域 名前のキーワード 教育レベル (Primary, Secondary, Higher, Non-Academic) 資金元 (Public, Private, Japanese government/agency) 日本語教育プログラムの有無 ネイティブの日本語の先生の有無 ニューヨークについて調べたところ、国際交流基金が把握している数では、Primary-level (小学校)が4校、Secondary (中学校、高校)が27校、Higher Education (高等教育)が44校、非教育機関が12校存在するそうです。 Primary United ...
  • 北米の継承日本語話者の統計に関するInfograph

    北米の継承日本語話者の統計に関するInfograph
    いろいろな北米の継承日本語話者の統計があったので、見やすいInfographにしてみました。 !function(e,t,n,s){var i="InfogramEmbeds",o=e.getElementsByTagName(t).process();else if(!e.getElementById(n)){var a=e.createElement(t);a.async=1,a.id=n,a.src=s,o.parentNode.insertBefore(a,o)}}(document,"script","infogram-async","https://e.infogram.com/js/dist/embed-loader-min.js"); AATJ_JHL_SIG_InfoGraph01Infogram
  • 継承語話者に関する総務省のレポート (グローバル人材育成に資する海外子女 帰国子女等教育に関する実態調査)

    継承語話者に関する総務省のレポート (グローバル人材育成に資する海外子女 帰国子女等教育に関する実態調査)
    一般的に出版された発行物ではないのですが、日本語の継承語話者に関する日本政府の取り組みについて非常に詳しく書いてあるレポートですので、紹介したく思いました。 総務省 (2015). グローバル人材育成に資する海外子女 帰国子女等教育に関する実態調査. 総務省 (Ministry of Internal Affairs and Communications of Japan). Retrieved at ...
  • 在外日系子女に関するレポートと新聞記事

    在外日系子女に関するレポートと新聞記事
    所用で、海外で長期間滞在する日系人子女について調べる必要があったので、そのまとめです。 まずは、2000年からの海外の日系人子女の動向について書いてある新聞記事が何点かありました。 日本人学校などで学ぶ児童・生徒は7万人以上 (December 3, 2014) https://www.nippon.com/ja/features/h00088/ 2000年から2013年くらいまでの全世界の海外での日系子女の統計や、日本人学校、継承語学校などへの通学状況、帰国時の言語能力についてまとめたもの。中国や他のアジア諸国にいる日系子女の多くは日本人学校に通うのに対して、英語圏(特に北米)の日系子女は現地校やインターナショナルスクールを選択することが多く、日本人学校に通う率が非常に少ないというのが印象深かった。 海外邦人131万人の子供は現地校?日本人学校? (June 18, 2016) https://mainichi.jp/premier/business/articles/20160617/biz/00m/010/004000c 上記と同様に、2000年から2015年くらいまでの海外の日系子女の教育動向をまとめたもの。まとめた人が、中国在住の小学生の子供がいる毎日新聞の特派員で、自分の経験にも基づいた記事になっている。上記の記事と同様に、アジア圏での日系子女の教育事情(ほとんどが日本人学校を希望)と、英語圏での日系子女の教育事情についてまとめられている。2014年時点では、北米地域(アメリカとカナダ)に在住する24,126人の子女のうち、日本人学校に通っているのはわずか435人(1.8%)とのことで、12,890人は、現地校と補習校、 10,801人 (45%)は、現地国のみに通学している。 在外の日系人子女の数として一般的に使用されているのは、外務省の「海外在留邦人数調査統計 (Annual Report of Statistics on Japanese ...
  • 複数言語を話す家庭での家庭言語政策について (OPOL: One-parent-one-language policy)

    Danjo, C. (2018). Making sense of family language policy: Japanese-English bilingual children’s creative and strategic ...
  • プリンストン日本語学校の継承語(永住組)コースの実践報告

    プリンストン日本語学校の継承語(永住組)コースの実践報告
    Calder, T. M. (2008). 補習校における母語支援: プリンストン日本語学校の実践から. In MHB研究会夏期研究大会 バイリテラル・バイカルチュラルの育成を目指して 実践と課題, xxx, xxx, 2008 (pp. 28-37). ニューヨークにある補習校(日本の文部科学省から支援を受けている土曜日日本語学校)で、帰国を前提とした日本のカリキュラム以外に、継承語(永住組)コースが2007年から開始されたそうで、その取り組みや、課題などに関する論文です。継承語コースは素晴らしいというような論文ではなく、現場で直面する課題や、理想と現実の違いなどが書かれているとても良い報告だと感じました。 ただ単純に補習校の日本語の目標値を下げるのではなく、継承語としての日本語を独自の言語集団として認めようという試みであるのが読み取れます。日本語コミュニティーでは、よく母語話者と非母語話者がはっきりと分別されている文化がありますが(「日本人」は日本で生まれた日本語を話せる集団で、それ以外は完全な「日本人」じゃないというような感じ)、他の言語コミュニティー(特にスペイン語コミュニティー)では、「母語話者」というのは一体何かという問いが非常に頻繁にされていると感じます。 子供が継承語話者であったり、継承日本語の学校やクラス運営する上で、いろいろ参考になる文献だと感じました。
  • 継承語話者向けの教科書「おひさま」

    継承語を学ぶ4歳から小学校低学年向けの教科書「おひさま」がくろしお出版から発行されました。内容はとても重質しているようなので、一冊買ってみようかと思っています。 ———————————- おひさま[はじめのいっぽ] 子どものための日本語 山本絵美/上野淳子/米良好恵[著] くろしお出版[編] 価格2,000円+税 ISBN978-4-87424-757-0 C0081 発売日2018/4/2 ページ数200頁 複数の言語や文化に囲まれて成長するマルチリンガル(複数の言語を使用する人)の子どものための日本語学習教材。3・4歳〜小学校低学年対象。子どもの心を捉えるイラストや写真、多彩なトピックや楽しい活動を通して言語の体験・知識を豊かにすると共に、感受性や知的好奇心を育む。さらに、日本や世界へと視野を広げ、異文化理解を促進し、自己表現と相互理解を目指す。補習授業校、日本人幼稚園、日本人学校などの教育機関だけでなく、ご家庭(国際結婚の家庭の子ども・海外在住の子ども・日本在住の外国人の子ども、帰国子女など)でもおうちの方と一緒に楽しく学べる。多様な言語環境にいる子どもたちが日本語に触れ、学びを始める「はじめのいっぽ」に。 ニューヨークの皆様、こんにちは。日本語教科書「おひさま」、ついに4月2日に刊行が決定しました。特に海外在住の日本人のお子さん(幼稚園から小学校低学年)を対象にした、「世界のことを学びながら日本語を楽しく学ぶ」、新しい教科書です。2014年より試用版を、世界中の皆様に実際に使っていただき、そして得た貴重なご意見をもとに改良を重ね、ようやく完成いたしました。 この1冊さえあれば、ご家庭、日本語学校、日本語教室、インターナショナルスクール、補習授業校のプリクラスで楽しい日本語学習が可能です。「世界の国々」「野菜・果物」「昔話」など全10章(26課、200頁オールフルカラーです。)で構成され、「生き物」「宇宙」「環境」に関しましては、東京大学と神戸大学の専門家の先生方に監修していただきました。現役の着物デザイナー、豆千代さん監修の着物に関するページもございます。 そして、各ページには親御さんや新米の先生にも使いやすいよう、「教え方のアドバイス」も丁寧に記してあります。また、様々な日本語力や年齢のお子さんにご利用いただけるように、難易度別に星マークで印もつけました。さらに、社会の多様性を意識して様々な国籍の人々を登場させ、職業のジェンダー、ステレオタイプや家族などにも配慮してあります。世界の名画やクラシック音楽などを盛り込み、芸術的な感性を育み、文化資本を豊かにする工夫も満載です。 まさに「おひさま」は、海外で子育てをされている親御さんの「こんな日本語教科書が欲しい!」という願いと、海外で子どもたちに日本語を教えている日本語教師たちの要望、そしてその分野を研究している研究者の学術的知識がギュッと詰まった一冊なのです。日本国内外の紀伊国屋やジュンク堂等の書店や日本のAmazonではもちろん、ご予約・ご注文いただければ他の(日系)書店でもご購入可能です。 最新情報は、随時、「おひさま」公式ページでご紹介します。「おひさま」をどうぞお楽しみに。 https://www.9640.jp/ohisama/ ———————————-