北米補習授業校での大規模アンケート調査: 「補習授業校児童生徒の学習状況調査等報告書」

コロナ禍になってしまい、あまり話題になっていませんでしたが、2017年に、海外子女教育振興財団が行っている「在外教育施設の高度グローバル人材育成拠点事業 (AG5)」の一環として、アメリカの補習授業校に通っている子女のアンケート調査が行われ、その結果が、「補習授業校児童生徒の学習状況調査等報告書」として2018年に出版されています。

対象となったのは、在外教育施設の「補習授業校」として認定されている学校(ニューヨークでは、ニューヨーク日本人学校LI校、ニューヨーク日本人学校Westchester校、ブルックリン日本人学校)に通う子女で、調査規模は、全米で49校、3,826名の回答と、かなり大規模の調査になっています。

「補習授業校児童生徒の学習状況調査等報告書」は、AG5のウェブサイト(https://www.ag-5.jp/archive)でダウンロードすることができます。

報告書の最初に、最も特筆すべきデータについて以下のように言及されています。『総数のうち「日本生まれ」(51.9%)と「日本以外で生まれた者」(48.1%)がほぼ拮抗していた…また、「アメリカ以外に居住経験がない」者が61.2%に上り、「一番得意な言語が日本語である」とした者は 55.4%にとどまった。」』。このデータは、全世界の補習授業校が、日本に帰国した際の編入をスムースにするための教育機関としての位置づけとの乖離が大きいことがデータとして出てきたと感じました。補習授業校に通う子女の半数近く、あるいはそれ以上の子女が、長期滞在者、あるいはアメリカに永住予定の子女であろうというデータですので、補習授業校が掲げる目標について、(少なくとも北米地域において)なんらかの変化があると良いと感じました。

報告書では、非常にデータが多く、いろいろ面白いと思う点があるのですが、日本国内で行われた同様なアンケートと差が顕著だった点が、以下のレポートにまとめられています。

海外子女教育振興財団 (2019). 補習授業校の子どもたちの特性: 日本国内の子どもたちの学習・生活状況等との比較から見えてきた姿『補習授業校児童生徒の学習状況調査等報告書』より. AG5だより, xx(xx), 1-3.

  • 補習授業校に通う子女は、日本の子女に比べて、「自分にはよいところがあると思う」と回答する人が多かった。
  • 補習授業校に通う子女は、日本の子女に比べて、「友達の前で自分の考えや意見 を発表するのは得意だ」と回答する人が多かった。
  • 補習授業校に通う子女は、日本の子女に比べて、「学校の決まりを守っている」と回答する人が多かった。(小六のみ)
  • 補習授業校に通う子女は、日本の子女に比べて、「人が困っている時は、進んで助けている」と回答する人が多かった。
  • 補習授業校に通う子女は、日本の子女に比べて、「将来、日本以外の国で仕事がしたい」と回答する人が多かった。
  • 日本の子女は、補習授業校に通う子女に比べて、「今住んでいる地域の行事に参加している」と回答する人が多かった。(小六のみ)
  • 補習授業校に通う子女は、日本の子女に比べて、「「地域社会などでボランティア活動に参加したことがある」と回答する人が多かった。(中三のみ)
  • 日本の子女は、補習授業校に通う子女に比べて、「普段、一日当たりどれくらいの時間、日本語のテレビやDVD、動画サイトなどを見たり、聞いたりしますか」に平均的に長時間回答した。
  • 日本の子女は、補習授業校に通う子女に比べて、「普段、一日当たりどれくらいの 時間、テレビゲームをしますか」に平均的に長時間回答した。

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