継承日本語の研究

継承語に関する研究について紹介しています。日本語に特化した研究以外にも、他の言語の研究なども紹介し、総合的に継承語の維持について考えています。他にも、継承語の研究に関する入門書なども紹介しています。

  • Community-Based Heritage Language Schools Conference (Oct 7-8, 2022)

    Community-Based Heritage Language Schools Conference (Oct 7-8, 2022)
    毎年ワシントンDCで行われているCommunity-Based Heritage Language Schools Conference (Oct 7-8, 2022)ですが、今年は、オンラインと対面同時に行われるそうです。 対面での参加は、D.C.のAmerican Universityで行われ、その様子がオンライン参加の人のためにZoomでも公開されるようです。Keynote speakersには、バイリンガル教育で著名な、Ofelia García, Richard Brecht, Jim Cumminsなどが予定されているそうです。オンラインでの登録は$25、対面参加での登録は$75とのことです。
  • 全世界の日本の在外教育施設の在籍学生数 (2022年)

    全世界の日本の在外教育施設の在籍学生数 (2022年)
    海外教育振興財団(JOES)が発行する「海外子女教育」で数年に一回くらいの頻度で1月号に在外教育施設で学ぶ子女の在籍者数のレポートが掲載されています。今年(2022年)の1月号にも、「ただいま何人!?」という記事で、最新の在外教育施設で学ぶ子女の在籍者数が報告されていました。 海外子女教育振興財団 (2022). 「ただいま何人!?」在外教育施設在籍者数. 海外子女教育, 1, 44-49. https://www.joes.or.jp/cms/joes/pdf/publish/kikanshi2/202201omdt.pdf その記事によると、2022年の情報 (調査時期は2020年-2021年)では、全世界で日本政府が把握している「日本人学校」と「補習授業校」の在籍子女数は44,728人とのことです。また、その他にも、私立在外教育施設と区別される教育機関(「慶應義塾ニューヨーク学院」など)や文部科学省や外務省からの援助を受け取っていないが、日本語による教育を実施している教育施設(「ニューヨーク育英学園」など)に所属している子女が3,950人おり、合計で、48,678人の学生が全世界の在外教育施設で日本語を利用して勉強しています。 このブログポストにもありますが、在外にいるとされる日系子女の総数と比べてみると、この数はかなり低い数になっています。おそらく理由としては、以下のようなものが挙げられると考えられます。 日本政府が把握している在外教育施設に含まれない教育機関(草の根的な小さな週末学校など)で勉強する子女が調査に含まれていない。 現地校のみで、日本語の学習などは家庭で行なっている。あるいは、日本語による学習は全く行っていない。 実際に調査に含まれていない子女がどれくらいいるのか、どのくらいの日系子女が日本語による学校教育をおこなっていないのかは、今のところわかっていません。 他方、わかっている情報を見てみると、いろいろな興味深いパターンが見えてきます。「海外子女教育」の2019年号でも同様な情報が公開されたのですが、その際の合計子女数は59,795人とのことでした。2022年の同じ調査の数が、48,678ということですので、ここ3年で急激に在外教育施設で学ぶ子女の数は減っています。これが、コロナ禍の中で行われた調査であったため、一時的に学生数が減っているのか、長期的な傾向として減っているのかはわかりません。この記事では、最も子女が多かった時期 (2013年前後)では、70,000人近い子女が在外教育施設で学んでいたということですので、もしかしたら長期的な傾向として減少している中で、コロナ禍のために多くの学校が閉鎖や中止に追い込まれている可能性は大いにあると思われます。 2022年のデータを見てみると、学齢期前(幼稚部)が4,285人、小学生が32,991人、中学生が8,995人、高校生が2,407人とのことですので、これまで通り、多くの子女は小学生の年齢で、中学生や高校生のレベルで日本語での教育を続ける子女はごく一部のようです。 地域的には、アジア 14,117人 (29.0%)、北米 19,409人 (39.9%)、欧州 10,444人 (21.5%)が主な地域になっています。 他方、地域ごとに利用する教育機関の種類は大きく異なり、大まかには、アジア圏では全日制の日本人学校を選択する子女が多いのですが、北米および欧州では、週末のみの補習授業校を選択する子女が多数を占めています。これは、平日に通う現地校が、言語、政治、宗教の違いなどから選択しづらい地域がアジアには多く、他方、北米と欧州では、現地校に通っても日本人学校に近い基準の教育を受けられることが多いためだと思われます。 日本人学校に通う子女だけのデータと補習授業校通う子女だけのデータを地域別に分けてみると、その傾向がよくわかります(上記の全体のチャートを比べてみてください)。大まかに言うと、日本人学校というと、その大多数(76.3%)がアジアに存在し、そのため、アジア圏で補習授業校に通っている子女はごく僅かになります。他方、補習授業校というと、多くが北米 ...
  • 国際交流基金による日本語デジタルライブラリー

    国際交流基金による日本語デジタルライブラリー
    アメリカの国際交流基金が日本の書籍のデジタルライブラリーの提供を開始するとのことです。カナダのトロントにある国際交流基金では、かなり以前から同様なサービスが開始されているそうで、そちらで提供されている書籍はhttps://jf.overdrive.comで見られるようになっています。 アメリカでの日本語デジタルライブラリーサービスが、カナダのものと同様な蔵書になるかはわからないのですが、カナダでのサービスを見ると「鬼滅の刃」やSpyxFamilyなどの英語版の漫画ebookや、日本語学習書籍 (交流基金の「まるごと」シリーズ、「げんき」、その他の日本語学習の参考文献など)、文庫本など、とても豊富な蔵書になっています。 2022年6月2日(木)現在、アメリカでの日本語デジタルライブラリーサービスのアカウントを希望する方の情報を以下のリンクで集めているとのことですので、興味がある方は以下のリンクを参照ください。 —————————— In collaboration with our New York and Toronto offices, The Japan Foundation Los Angeles ...
  • アリゾナ州での小規模な継承日本語学校の設立に関する調査

    アリゾナ州での小規模な継承日本語学校の設立に関する調査
    Siegel, Y. S. (2004). A Case Study of One Japanese Heritage Language Program in Arizona. ...
  • HLXChange.com: 継承語教育 (日本語を含む言語全般の)サポートページ

    HLXChange.com: 継承語教育 (日本語を含む言語全般の)サポートページ
    UCLAのNational Heritage Language Resource Center (NHLRC)のダイレクターをやっておられるCal State Long BeachのMaria Carreira先生やその同僚の方が、継承語教育(言語を問わず、全ての言語の継承語教育)のサポートをするためにHLXChange.com (https://www.hlxchange.com)というウェブサイトを公開されたそうです。 まだ色々開発中のようですが、すでにいくつかの継承語教育に関するリソースが紹介されています。このページでは、いくつかの短いYouTube videosでJames Lang/Flower DarbyによるSmall Teachingという手法が紹介されています。
  • ロサンゼルス近郊の継承日本語話者の人口動勢 (Treist et al., 2022)

    ロサンゼルス近郊の継承日本語話者の人口動勢 (Treist et al., 2022)
    Mutilingual La La Landというロサンゼルス近郊の継承語話者の人口動勢の本が2022年に出版されるのですが、その中の一章で、継承日本語の最近の人口動勢について書かれています。 Triest, M. A., Hayashi Takakura, A., & Hitchins Chik, C. (2022). Japanese: ...
  • International Guidelines for Professional Practices in Community-Based Heritage Language Schools

    International Guidelines for Professional Practices in Community-Based Heritage Language Schools
    Coalition of Community-Based Heritage Language SchoolsというUCLAにある継承語教育の研究団体が、全世界のコミュニティーベース学校(正規の学校ではなく、保護者やコミュニティー主体で始まる継承語の保持を目標とした週末やアフタースクールの学校)を調査し、(1) 継承語学校に当てはまる共通の教育原理とは何か、また、(2)継承語学校が指針として参考にできる質の高い教育とは何かを定義したガイドラインが作成されました。 Aberdeen, T., Cannizzaro, G., Douglas, M. O., Emilsson Peskova, ...
  • Community-Based Heritage Language Schools Conference (Oct 8-9, 2021)

    Community-Based Heritage Language Schools Conference (Oct 8-9, 2021)
    毎年ワシントンDCで行われているCommunity-Based Heritage Language Schools Conference (Oct 8-9, 2021)ですが、今年もオンラインで行われ、その際の発表の一部の録画が一般に公開されています。 いろいろな発表があるのですが、特に良いと思ったのは、継承語教育をサポートしている全米の団体の短い紹介ビデオがありました。継承語教育の運営者や保護者の方にはあまり直接知る機会がない団体ですが、さまざまなサポートをしているようなので、みても良いかと思います。紹介されていた団体は、以下の団体です。 ACTFL, America’s Languages Initiative, Center for Applied Linguistics ...
  • 海外の日本語教育の現状 2018年度日本語教育機関調査

    海外の日本語教育の現状 2018年度日本語教育機関調査
    もう去年の話で少し出遅れているのですが、国際交流基金 (The Japan Foundation)が3年ごとにやっている全世界での日本語教育機関の調査アンケートの2018年の調査結果がレポートとして発表されました。 The Japan Foundation. (2020). 海外の日本語教育の現状 2018年度日本語教育機関調査より (Survey Report on Japanese-Language Education Abroad ...
  • 「おひさま」プロジェクト

    「おひさま」プロジェクト
    継承語話者向けの教科書「おひさま」の著者の方々(山本絵美・上野淳子・米良好恵)が2021年から教科書だけでなく、「おひさま」プロジェクトとして、定期的な公演、ワークショップなどの活動を行っているそうです。日本語を継承語として話す子供たちに関する教育情報や、おすすめの本などがウェブサイトで見られるようになっています。 月1,500円で会員登録もでき、子供の年齢に合わせた教材の配布や、各種講演会情報、教育情報を掘り下げたコラムなどを配布してくれるそうです。 現在、ウェブサイトと「おひさま」のYouTube channelでは、無料で講演会の様子が見られるようになっています。