北米の日系アメリカ人の歴史

北米の日系アメリカ人の歴史についてのとても面白い本とウェブサイトを見つけたので、その紹介です。

日本語継承語話者は、いわゆる1.5世か2世の日系アメリカ人になるのですが、最近、継承語話者の人と話していて感じたのは、言語や文化に関しては知識がある継承語話者の人でも、歴史のことを聞くと、ある程度の日本の歴史と、西欧主観的なアメリカの歴史の知識があるものの、どちらも自分の歴史ではないという思いがある人が多いと感じました。いわゆる日系アメリカ人の歴史というのは、アメリカの学校ではあまり触れられず、また、1世である継承後話者の保護者の間でも知られていないので、日本語継承語話者に伝承されていかないのだと思います。

日本人はアジアの中でも比較的早くからアメリカに移住を始めた民族の一つです。1860年代にアメリカ西部と東部をつなぐTranscontinental Railroadの労働者として移住を始めた中国人とともに、日本人も国内の景気の悪化のため、アメリカでの経済的成功を求めて労働者として移住を始めました。ですので、おおよそ日系アメリカ人はアメリカでは160年の歴史があるわけで、一番最初に訪問した日系移民の子女は今では4世や5世、あるいはそれ以上の世代を経ているわけですが、常に日系移民が続いていたわけでなく、北米の日系アメリカ人の歴史では大きく二つの分断期がありました。一つは、19世紀末からアメリカでのアジア人差別「黄禍論」が広まった際に、日本政府とアメリカ政府の間で結ばれた日米紳士協定(1907)による日本政府の自主的アメリカ移民制限、もう一つは、第二次世界大戦の日米開戦(1941)です。

今回紹介しようと思ったのは、その分断期について書かれた資料で、一つは、Daniel Inouye氏による以下の本で、日本の最初の移民から、第二次世界大戦の日米開戦(1941)まで(いわゆる最初の分断期)について書かれています。

  • Inouye, Daniel H. (2018). Distant Islands: The Japanese American Community in New York City, 1876-1930s. Boulder, Colorado: University Press of Colorado.

もう一つはウェブサイトなのですが、Japanese American Studiesの中ではとても有名なDensho Project (http://densho.org)が、日本語に翻訳されたページです。このページは、TBS開局60周年特別企画「99年の愛 Japanese Americans」というドラマの歴史背景の資料として作成されました。これは主に、第一次、第二次世界大戦中の日系アメリカ人について記載があります。

これらの文献をみて思ったことですが、これらの分断期には、日系移民が減少しただけでなく、日系アメリカ人、特に1.5世や2世の間で、「我々は日本には見放された」という思いや、「我々は民族的に日系なだけで、アメリカ人でありアメリカ文化や英語だけを知っていれば良い」という思いが増えていったのではないかと感じました。Denshoの中でも詳しく書かれていますが、第二次世界大戦中に、日系人収容所で日系アメリカ人が忠誠登録をする際に「大戦へのアメリカ人兵としての参加」と「日本の天皇への非忠誠」を聞かれ、一世日系人が多かった高齢な成人の答え方と、二世日系人であるその子女たちの答え方が異なったため、家族が離れ離れになるということがあったのは今もよく語られています。

今は日米の関係が良好で、日系移民の分断期が訪れる様子はありませんが、歴史をみてみるとわずか160年の間に何度も分断期があったことを考えると、いまの状況がこれから永遠に続いていくというのは楽観的すぎると感じます。もし、政治的、経済的な状況が変わった時に、自分と自分の子供達の間で、分断期に経験したような民族のアイデンティティーによる分断が起きないことを祈ります。

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